荒木飛羽&曽野舜太&藤本洸大「LGBTQは何も特別なことじゃない」<スメルズ ライク グリーン スピリット>
荒木飛羽主演のドラマフィル「スメルズ ライク グリーン スピリット」(毎週木曜深夜1:29-1:59ほか、MBSほか※FODにて見放題独占配信)が現在放送中。本ドラマは、青春ストーリーの金字塔である永井三郎原作の同名漫画の実写ドラマ版。クラスで浮いていて “髪が長い”という理由でいじめられる主人公・三島フトシと、“本当の自分”を押し殺して三島をいじめる桐野マコト、三島に対して強く当たってしまう夢野太郎ら少年たちのひと夏を描いている。このたび、WEBザテレビジョンでは、三島を演じた荒木と、桐野役の曽野舜太、夢野役の藤本洸大にインタビューを実施。本作への思いや撮影秘話を聞いた。 【写真】曽野舜太“桐野”に口紅を塗るボブヘアの荒木飛羽“三島” ■藤本「ひと夏のことなのに人の一生を見ている感じの満足感」 ――原作と脚本を読んだ感想から教えてください。 曽野:僕は読む前にキラキラの青春ストーリーをイメージしていたんですけど、読めば読むほど単純な物語ではないなと引き込まれました。読み終えてから、“これを自分が演じるんだ”と改めて思い、“期待に応えたい、いいものを作りたい”という気持ちになりました。 荒木:僕は最初に原作を読ませていただいたときに、言葉にできない読後感がありました。あと、三島はすごくかわいい子で、僕にできるのかなという不安もあったんですけど、桐野や夢野や柳田先生(阿部顕嵐)に対してそれぞれ違った感情を持っているので、その感情にちゃんと向き合って演じようと思いました。 藤本:僕はオーディションだったんですけど、原作を一気に読んでしまって。ひと夏のことなのに人の一生を見ている感じの満足感があって、展開も目まぐるしくてすごいなと思いました。それと、自分は実際に高校生のときに同性愛の友だちが周りにいて、LGBTQの授業もあったりして、僕自身どのように捉えればいいのか考えていたこともあったんですけど、この作品に触れて、LGBTQは何も特別なことじゃなくて、いい意味で悩む必要はなかったんだなと気付くことができました。 ■曽野「好きっていう気持ちをライクとラブで分けなくてもいい」 ――それぞれの役へのアプローチはどのようにされましたか? 曽野:桐野は男の子だけど心が女の子で、男の子に好意を持つという役柄です。僕自身は男の子に恋愛感情を持ったことがなかったのですが、僕はグループ活動をしていてメンバーのことがすごく好きなんです。メンバーのことを愛しているかどうかと考えていくうちに、好きっていう気持ちをライクとラブで分けなくてもいいというか、ただ人を愛する気持ちと思ったら自然と役作りができました。 荒木:原作を読んだときに、三島がいじめられているシーンにもコミカルな部分があって、原作に寄せたほうがいいのか迷いました。監督に相談すると、「自分が思う三島を演じて大丈夫」と言ってもらえたので、しっかり原作を読んで、原作の三島からもらえるところはもらって、あとは自分なりの三島を演じさせてもらいました。 藤本:夢野はすごく明るくて純粋過ぎるほど純粋なキャラクターだと思いました。原作を読んですごくリアクションが大きいんだろうなと思っていたので、僕自身の普段の学校の友だちに対するリアクションもたぶん大きくなっていたと思います(笑)。 ■荒木「『暑い暑い』って盛り上がったらもう仲良くなっていました」 ――役とご自身との共通している部分を教えてください。 曽野:桐野は周りの環境もあって自分の感情を押し殺して外面のキャラを作っていて、そこが似ているなと思いました。僕は大人に良く見られようという気持ちが潜在的にどうしてもあって、もう自分のアイデンティティーになっているところがあるんですよね。 荒木:僕はかわいいものが好きなところかな。自分も小さい頃からぬいぐるみとかかわいいものがすごく好きで、気付いたらベッドの周りがぬいぐるみだらけとかよくあって。今もディズニーのダッフィーのぬいぐるみがないと寝られないです。 藤本:僕は共通点ではなくて逆の部分なんですけど、僕自身は部屋をきれいに片付けるというかそもそも物がほとんどなくて。それに対して夢野は部屋を結構散らかす性格なので、宅配の段ボールもそのまま放置したりしていました。そういう部屋に住んで夢野っぽい感覚になろうかなって。 ――お互いの第一印象と共演してからの感想はいかがですか? 曽野:荒木くんはロックでパンクでかっこいいイメージだったんですけど、会ったときにはもうエクステを付けていて、ボブでかわいいなと思っていたら、オムライスが好きで自分でも作っていると話していて、“なんだこのかわいいやつ”って(笑)。でも、共演していく中で、少年っぽさも感じてギャップに惹かれていきましたね。藤本くんは逆にギャップがなくて明るい太陽みたいな存在でした。 荒木:初めて会った本読みのときはみんな結構硬かったんですけど、撮影が始まったら自然と打ち解けました。最初の走るシーンの撮影が初日で、真夏の暑すぎる中、走っていたらみんな吹っ切れて。 曽野:あれヤバかったよね。 藤本:ヤバかった。 荒木:「暑い暑い」って盛り上がったらもう仲良くなっていました。 藤本:曽野さんは王子様のようで、最初はキラキラしていて。 ――最初は…? 曽野:え、怖い怖い(笑)。 藤本:いや、撮影に入ったら皇帝というか。 曽野:威張ってるやつじゃん(笑)。 藤本:役柄的に僕は桐野には逆らえないので。桐野はトップにいて僕はその犬みたいな感じだったんです。でも、実際には優しくて、僕たちの騒がしい感じにも混ざってくれて。飛羽くんはテレビや映画で見ていた感じと違って、少年っぽくてかわいいなと思いました。 ■藤本「もともと型なんて存在しないということを再認識できた」 ――いじめや主人公たちの悩みや葛藤が描かれる本作ですが、役を通して考えさせられたことなどがあれば教えてください。 曽野:舞台は田舎ですけれど、都会にいても、コミュニティーの狭さを感じることってあると思うんですよ。学校だとかママ友だとか。いい話は全然広まらないのに悪いうわさはすぐ広まったり、自分に重なる部分があるんじゃないかと。とてもリアルに描かれていると思います。 荒木:監督とも話したんですけど、少年たちの日常を切り取った感じに撮りたくて、本当にリアルだと思うので、学生の方に届いてほしいです。心のよりどころになったり不安な感情とかも全部ぶつけられる作品になるといいなと思います。あと、お母さんがこの原作を読んで「感動した、すごく良かった」と言っていて。まだまだ子どもな自分とは絶対に違った受け取り方をしていると思うので、いろいろな世代の方に見てほしいです。 藤本:やっぱり人間って型にはめたいというか、型から抜け出している少数の人のことを“普通じゃない”と言う傾向があると感じています。でも、全部まとめて普通というか、もともと型なんて存在しないということを僕としてもこの作品で再認識できたので、皆さんにとっても考える機会になったらうれしいです。きれい事に聞こえるかもしれないけど、そういう意識を持つことが大切だなと思います。 ◆取材・文=牧島史佳 撮影=小川拓洋 ヘア&メーク=反田やよい(荒木飛羽)、中島愛貴(曽野舜太)、粕谷ゆーすけ(藤本洸大)