天王寺動物園、来年に開園110年 万博と合わせ多彩なイベント 園長は獣医さん
天王寺動物園(大阪市天王寺区)は来年1月1日に、開園110周年を迎えます。大正4(1915)年1月1日、天王寺公園の一角に大阪市立動物園として誕生しました。 開園当初は、広さ約2万6千平方メートルと現在の5分の1の大きさで、府立大阪博物場附属動物檻から181点の動物たちが無償で移管され、その他の動物を含め60種の動物たちが展示されていました。動物数と入園者の増加で昭和10年には約6万平方メートルと2倍以上になりました。 この頃には、テーブルでフォークを使って食事するなどの演技を見せたチンパンジー、リタの人気もあり、入園者は250万人を突破。東京の上野動物園と海外の珍しい動物を競って導入するという状況でした。ただ、戦争の影が忍び寄り、昭和18年には猛獣類の処分が始まります。 終戦後まもなくは剝製や家畜の展示しかできず「静物園」と揶揄(やゆ)されたそうです。昭和25年にゾウの春子、ユリ子が入園し、活気を取り戻しました。36~54年に近代的動物舎の建設が始まり、無柵放養式のクマ舎、カモシカ園、ゴリラ舎、類人猿舎を相次いで建設。大阪万博の45年にはゾウのラニー博子が入園するなど海外との動物のやり取りも盛んになります。このころにニュージーランドの国鳥「キーウィ」が初めてやってきました。キーウィはその後も入園し、今年8月まで国内で唯一飼育を続けていました。 平成元年にはコアラ館が完成し、オーストラリアからコアラ3頭が来園。その後「爬虫類(はちゅうるい)生態館アイファー」や「アジアの熱帯雨林」「アフリカサバンナゾーン」も整備されました。 経営環境の変化などを受け、令和3年4月に大阪市直営から地方独立行政法人に転換しました。来年は2025年大阪・関西万博があり、開園110周年事業と合わせてさまざまな企画を用意しています。 天王寺動物園園長(理事兼務)獣医師 向井猛 むかい・たけし 神奈川県藤沢市出身。北海道大大学院獣医学研究科修士課程修了後、札幌市の円山動物園で獣医や職員として勤務した。令和3年4月から天王寺動物園園長。漫画『動物のお医者さん』に「M山動物園の向田獣医」として登場した。