炎症では体を冷やすべき? 温めるべき? PRP注射は? 適切な対処法を専門家に聞いた
冷水浴・サウナ・PRP注射などの効果は、悪者扱いされがちだが体の修復に不可欠な炎症
冷水浴や温熱療法、医療機関で受けられる特別な注射が、体の損傷による炎症への対処法として人気だ。これらの方法は、本当にけがや病気の治りを早めるのだろうか? 科学者らの研究によって、炎症はどのような場合にいい効果をもたらし、どのような場合に害を及ぼすのかという長年の謎の答えが、少しずつ解明されつつある。 ギャラリー:炎症を抑える食べ物とは、病気の進行やがんの治療にも影響 写真6点 「炎症は悪者扱いされています。だれもが自分の体の炎症をなんとかして抑え込もうとするのです」と、米カリフォルニア大学アーバイン校の整形外科医でスポーツ医学部門長のディーン・ワン氏は言う。「しかし、すべての炎症が同じではなく、制御された炎症は治癒に必要です」
体の修復に炎症は必要不可欠
関節の痛みはほぼすべての人が経験する。関節の軟骨や骨、靱帯(じんたい)などに変化が起こる「変形性関節症」は、55歳以上の約80%に影響を与えているという推定もある。また、けがは加齢とともにますます増え、治りは遅くなる。 けがや関節症から来る筋骨格系の痛みの主な原因は、炎症であることが研究で示唆されている。しかし、この痛みのコントロールには、複雑な問題がからんでいる。一つは、炎症は体が損傷を修復するために必要不可欠なプロセスであることだ。 仕組みを説明しよう。靱帯や腱などが傷められたり切れたりすると、その衝撃が引き金となってサイトカインなどの炎症性物質が放出され、「急性炎症」と呼ばれる一連の現象が始まる。 まず、ただちに血管が広がり、傷ついた部位に多くの体液が流れる。そして、腫れが起こり、血液が固まり、さらに多くの炎症細胞(白血球など)が集まって傷ついた細胞を取り除き、他の細胞もやってきて損傷した腱や靱帯などの組織の修復を進める。 急性炎症のプロセスは治癒に不可欠だ。そのため、ワン氏が肩や膝の手術をする際には、鋭いツールを使って手術部位の組織を削って「少しだけめちゃくちゃに」して、出血を促すのだという。すると、修復を担う炎症のプロセスが加速する。この処置は、急性期を越えて続く慢性的な痛みや炎症にさえ効果をもたらすと、氏は述べている。