規格外の大根を看板メニューに 食品ロスに取り組む すし酒場
食品ロスに取り組んで生まれた人気メニュー「マグロメンチ」
食品ロスやSDGsについて、大根以外でどのような取り組みをしているのか。 大島一美氏(以下、大島氏):SDGsへの取り組みの一つとして、マグロメンチ(1個100円)を発売した。マグロの鮮度はいいが、1日たつと色が変わってしまう。色みが変わったマグロを無駄なくおいしく食べられるメニューとして考案したのがマグロメンチだ。ミンチ状にしたマグロを衣に包んでメンチとして揚げる。10食限定(先着順)だが、好評で、お店のオープンとともに注文が入り、すぐに売り切れる。 すばらしいアイデアだ。マグロに限らず食材を無駄にしないメニューはまだまだ増えるのでは。 大島氏:SDGsのためのメニューは、職人とよく相談している。おいしく食べられることを大前提に、今後も考案していきたい。 形がいびつな規格外の大根を活用するようにしたのも大変ユニークだ。 大島氏:コエドのお通しを鶏白湯大根おでんにしている理由は2つある。一つ目は、看板メニューであるおでん大根を来店客全員に食べてもらい、おいしさを知ってもらいたかったからだ。二つ目は新鮮でおいしい野菜でも、形がいびつだったら売れ残って破棄されると聞いたからだ。 規格外でも大根なら、おでんサイズにカットすれば、見た目は遜色なくなるので、お通しにぴったりだと思った。 すばらしいアイデアだ。規格外の分、仕入れ値はかなり安くなるのか。 大島氏:野菜の仕入れ業者には、食材ロス削減の意図は伝えているので、規格外の大根を送ってもらっている。ただ価格だけでいうと近所のスーパーの方が安かったりする。しかし、農家さんとWIN-WINの関係でいるためにも、仕入れ値は規格内の普通の大根とは変えず、その代わり品不足の場合もできるだけ卸してくれるような良好な関係を維持している。 その姿勢も立派だ。業者とのやり取りはどのようにしているのか。 大島氏:スマホに野菜の価格情報を写真と共に送ってきてくれるので、店長に確認して必要な野菜をオーダーしている。本数や量が提示された数量より少ない注文でも対応してくれるのでありがたい。 ●吉祥寺は採用しやすい好立地 大島さんは人事も兼任している。飲食業界はスタッフの人材不足でかなり苦労しているが、ソフトラインはどうか。 大島氏:中途、新卒共に正社員で募集しているが、ありがたいことにいい人材が集まっている。福利厚生が30項目あったり、休日が取りやすかったりと働きやすい環境づくりが好評なのかもしれない。 採用のためには、都内にあるほとんどの調理師学校に足を運んでいる。先生たちに直接、会社を紹介し理解してもらい、企業情報の書かれたパンフレットを置いてもらっている。今年は、都内の調理師学校を卒業し、うちのお店にお客として来店したこともある2人が入社してくれた。 それはよかった。アルバイトの採用はどうか。 大島氏:アルバイトの求人もそれほど困っていない。吉祥寺には大学や専門学校がたくさんあって、住んでいる学生も多いため、アルバイトが採用しやすい場所なのだと思う。 他のエリアに出店している飲食店オーナーにとっては、うらやましい話だ。最後に、今後の展望を聞かせてほしい。 大島氏:従業員の教育を大切にしながら、繁盛店にしたい。かつて働いていた従業員が退職し、他の会社で働くとき、言葉遣いや礼儀作法、気配りなどの接客スキルを生かしてほしい。それも社会貢献の一つになると思う。 ●取材を終えて 食品ロスやSDGsに本格的に取り組めていない飲食店が多い中で、コエドが行っている取り組みは、高く評価されるべきだ。もう一度言いたい。食品ロスやSDGsに対する活動は、小さなことを積み重ねていくと、それはいずれ大きな力になるはずだ。
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