コンサドーレ札幌に内定している檀崎竜孔の今大会で最も美しいシュートで青森山田が8強進出
昨夏のインターハイでは昌平(埼玉)から2点のリードを奪いながら、4連続失点を喫して2回戦で姿を消した。高円宮杯JFA・U-18プレミアリーグEASTでは、優勝した鹿島アントラーズユースよりも負け数が少ないにもかかわらず、勝ち切れずに引き分けに終わった7試合が響いて2位に終わった。 このチームで迎える最後の戦いとなる選手権での覇権奪回へ。1995年から青森山田を率い、全国屈指の強豪校へ育て上げた黒田監督は、キャプテン交代を介して「ショック療法」を施すことを決意した。 「選手たちの心を動かすのは危機感ですから。どのようにして、それを効率的に与えていけばいいのか。ちょっと荒療治にはなりますし、ある意味で賭けではあるんですけど、四苦八苦してきたチームが再構築されたときには全員が一歩成長して、ひと回り大きくパワーアップしてくれるんじゃないかと」 ベガルタ仙台のジュニアで将来を嘱望されながら、全国中学校サッカー選手権を制した青森山田に憧れ、門を叩いてから6年目。卒業後は北海道コンサドーレ札幌入りする檀崎は、最後の年にかける思いを背番号と左腕に巻くキャプテンマークを介して表現してきたはずだった。 「ただ、やるべきことは特に何も変わらないので。ずっと積み重ねてきたものがあるし、チームを引っ張るという部分では継続して、声がけなどでも積極的にやっていかなきゃいけないと思っています」 突然のキャプテン交代をこう振り返る檀崎の心中を、黒田監督も「もちろんショックはあると思います」と慮りながらも、心を鬼にするかのような思いとともに言葉を紡ぐ。 「練習時にはキーパーは別になることが多いので、ピッチのうえでは檀崎が引っ張っていかなければいけない。キャプテンマークを誰が巻くか、という細かいことにこだわっているようではダメだし、ここまでチームをけん引してきた檀崎がやるべき仕事も変わらない。それがプロへ行く者が背負う責任だということは、檀崎本人にも言っていますので」 以心伝心と言うべきか。大津戦で誰よりも声を出していたのも、草津東との初戦を前に硬さが見える仲間の背中をポンと押していたのも、1年生から選手権のメンバーに名前を連ねる檀崎だった。 「自分はコーチングを大事にしているし、それを一人ひとりがやっていかないと、選手権では一瞬の隙を突かれてしまう。目に見える(ゴールという)結果も大事ですけど、それ以上に勝利につながるアシストであるとか、守備で貢献していくことの積み重ねが大事だと思っているので」 埼玉スタジアム行きがかかった5日の準々決勝では、矢板中央(栃木)と同じ等々力陸上競技場の舞台で対峙する。ショック療法の効果は出ているのか、と問われた黒田監督は「優勝した2年前のチームによく似てきた」と笑顔を浮かべる。視線の先には、心のなかにキャプテンマークを忍ばせる檀崎がいた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)