コンサドーレ札幌に内定している檀崎竜孔の今大会で最も美しいシュートで青森山田が8強進出
ビハインドを背負った大津(熊本)が、全体的にやや前がかりになってきたこと。前半は風上でプレーしていたこと。そして、相手GKがロングボールに対して前へ出て来られない悪癖を抱えていたこと。青森山田(青森)の「10番」を背負う檀崎竜孔(だんざき・りく=3年)は、すべてを的確に把握していた。 首都圏の4会場で3回戦の8試合が行われた、3日の第97回全国高校サッカー選手権。現時点で最も美しく、なおかつ高校生離れしているスーパーゴールが等々力陸上競技場のピッチに刻まれたのは、青森山田がセットプレーで先制点を奪ってからわずか4分後の前半23分だった。 ボランチの天笠泰輝(3年)がフィールドの中央付近でボールをもった瞬間、左タッチライン際にいた檀崎の脳裏にはゴールまでのルートが鮮明に浮かび上がっていた。 「天笠からのああいう形のパスは、日頃の練習からよく出ていたので。目が合った瞬間、いいパスが来ると感じました。オフ・ザ・ボールの部分で、すごくいい動き出しができたと思っています」 斜め右前方に見える大津のゴール前へ、いわゆるダイアゴナルの動きでスプリントを始める。味方のFW佐々木銀士(3年)を追い越し、トップスピードに乗ってペナルティーエリア内へ侵入してきた檀崎の足元へ、寸分の狂いもないロングパスが入る。正確なトラップから、最後はマークにきた2人のDFの間を縫って半ば強引に押し込む形で、青森山田の準々決勝進出を決定づける追加点が生まれた。 「ワンタッチして相手ゴールを見たときにシュートを打とうと思ったんですけど、もうちょっと前へ運んだほうがいいかなと。ちょっともつれた形になりましたけど、相手よりも先にボールを触ろうと突っつきました。泥臭い感じはありましたけど、状況ははっきり見えましたし、冷静にプレーできたと思います」 6人の選手がそれぞれ1ゴールずつをあげる快勝で、草津東(滋賀)を一蹴した2日の2回戦。2種年代の最高峰となる舞台、高円宮杯JFA・U-18プレミアリーグEASTで2位以下を大きく引き離す16ゴールをあげて、昨シーズンの得点王に輝いた檀崎は1アシストをマークしただけだった。 悔しさ以上に危機感を募らせた。連覇を狙った前回大会は3回戦で、長崎総合科学大学附属(長崎)に苦杯をなめさせられた。檀崎自身も「7番」を背負い、2年生以下ではただ一人、先発フル出場していた。この日の3回戦で顔を合わせる大津は、初戦でU-19日本代表のFW西川潤を擁する桐光学園(神奈川)を5-0で撃破。ダークホースとなりうる勢いを見せていた。 頂点を目指すうえで、同じ轍を踏むわけにはいかない。昨年を知る者だからこそ、連続完封を達成した守備陣の奮闘に応える形で、自らも選手権初ゴールを決めたことに「ホッとした」と本音を打ち明ける。 「注目される大事な一戦で仕事をできたことは、青森山田の『10番』としてはよかったと思っています。ただ、あと2、3本チャンスがあったので決め切らないと上では通用しない。もっと違いを見せるというか、プレーでチームを引っ張っていかないといけない」 実は「10番」に加えて、背負っていたものがもうひとつあった。前回大会後に新チームが結成されてから託されてきたチームキャプテンを、22年連続24回目の選手権出場を決め、組み合わせ抽選も終えた11月下旬になってGK飯田雅浩(3年)に託した。黒田剛監督(48)の決断だった。 「チームを一度ぶち壊して化学反応を起こさせ、一から再構築させていくうえで全員が納得して、気持ちを切り替えてやっていることです」