東京都庭園美術館で「戦後西ドイツのグラフィックデザイン」が開催へ
東京・白金台の東京都庭園美術館で「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」が開催される。会期は2025年3月8日~5月18日。 同展は、現在西宮市大谷記念美術館で開催中(~2025年2月24日)であり、その巡回展となるものだ。 ドイツでは1919年にバウハウス が創設され、そのモダンデザインの思想と新たな造形教育は、世界に多大なる影響を与えた(1933年に廃校)。その後勃発した第二次世界大戦での敗戦により45年にドイツは東西に分断され、90年に再び統一されるまで、ドイツ民主共和国(東ドイツ)とドイツ連邦共和国(西ドイツ)といったふたつの国が誕生。53年には西ドイツでバウハウスの理念の継承を目指したウルム造形大学が開設され、閉校となるまでの15年間、デザインの理論と実践を発展させ、デザイン教育の分野でも大きな足跡を残した。 1950年代末に西ドイツは、GNP(国民総生産)が世界2位となり「経済の奇跡」と称されるほど経済的躍進を果たしたが、その背景には、商業と密接な関係にあるグラフィックデザインの存在が挙げられる。また、72年のミュンヘンオリンピックや国際的セーリング・フェスティバルの「キール ウィーク」、4~5年ごとにカッセルで開催される現代美術展「ドクメンタ」など、国家的イベントのイメージ形成にもグラフィックデザインは大きな役割を果たしてきたと言えるだろう。 同展は、デュッセルドルフ在住のグラフィックデザイナーであるイェンス・ミュラーとカタリーナ・ズセックによって収集された「A5コレクション デュッセルドルフ」が所有する戦後西ドイツのグラフィックデザイン資料のなかから、幾何学的抽象、イラストレーション、写真、タイポグラフィの観点から選ばれたポスターを中心に、冊子や雑誌など多彩な作品を展示。これらの展示物を通じて、バウハウスやウルム造形大学が提唱したデザイン教育を基盤としたモダニズムを継承しながらも、戦後の新しい時代の表現を追求した西ドイツにおけるグラフィックデザインの世界を垣間見ることができるだろう。 なお、会期中には講演会やコンサート、ワークショップといった関連プログラムが多数展開される。また、全体の入館人数を制限し、普段よりも空いた環境でゆっくりと鑑賞することができる「フラットデー」も実施(要予約)。車椅子の方や介助等が必要な方、ベビーカーを利用される方が余裕を持って鑑賞することができるほか、赤ちゃんとそのご家族のための特別開館日も設けられるため、この機会にぜひ活用してみてほしい。