【所得を減らして豊かな暮らしへ】メリットが大きい「住民税非課税世帯」という選択肢 給付金に優遇措置、国民年金保険料免除、国民健康保険料や介護保険料も減額
所得税が最低税率5%なのに対し、一律10%の負担になるのが住民税だ。現役世代に比べて収入が低くなるシニア世代にとっては重い負担になる。そこで注目されるのが、「住民税非課税世帯」を目指すというやり方だ。税理士、CFP(認定ファイナンシャルプランナー)などの資格を持つ相原仲一郎氏が語る。 【写真】「住民税非課税世帯」について解説した税理士の相原仲一郎氏
「一定基準の所得を下回り住民税非課税世帯となると、住民税の負担がゼロになるだけでなく、給付金など数々の優遇措置を受けられる。国民年金保険料が免除され、国民健康保険料や介護保険料も減額されます。所得に応じて一定額を超えた分の医療費が還付される『高額療養費制度』では、70歳以上の住民税非課税世帯の自己負担上限額は月2万4600円。課税世帯と比べて3万円以上低く設定されています」 住民税非課税世帯となる所得基準は自治体によって異なるが、年金生活の夫婦の場合、東京など大都市部では世帯主の年金収入が「211万円以下」、地方の中核都市なら「203万円以下」、それ以外は「193万円以下」となる。各自治体のホームページで基準が記載されている。相原氏は、そうした住民税非課税世帯の条件を満たすためにあえて所得を下げることが選択肢になると説く。 「そもそも年金生活者なら該当する世帯は少なくないが、年金を受給しながらアルバイトなどで給与をもらっている場合、その収入によってわずかに基準を超えていることがある。そうした収入をあえて減らし、住民税非課税世帯になったほうが得になるケースはある」
優遇措置は様々ある。現在実施されている「物価高騰対策支援給付金」(令和6年度)では、住民税非課税世帯に10万円が支給される。そのほか上下水道料金の減免や、公共交通機関を割安に利用できるなど独自の制度を設ける自治体が多数あるのだ。 「年金受給が目前に迫る世代は、『ねんきん定期便』で将来受給できる年金額を確認して、211万円を少し超える程度なら繰り上げ受給などで年金額を減らして住民税非課税世帯になることを検討してもよいでしょう」(同前) 公的年金の繰り上げ受給は受給開始を1か月早めるごとに0.4%減額になる。減額は生涯続くため慎重な判断は必要だが、検討には値しそうだ。 ※週刊ポスト2024年11月8・15日号