【箱根駅伝】シューズにはチームメイトからのメッセージ 初代MVP&金栗杯、青学大・野村昭夢の背中を押した言葉
◇第101回東京箱根間往復大学駅伝競走復路(3日、神奈川・箱根町芦ノ湖スタート~東京・千代田区大手町読売新聞社前ゴール=5区間109・6キロ) 総合成績一覧 青学大の6区・野村昭夢(4年)が、区間新記録となる56分47秒での区間賞。復路で勢いをつけ、総合2連覇に導いた。大会後に野村は、優勝チームから選ばれる新設の初代「大会MVP」と、全チーム対象で最も活躍した選手に対して贈られる「金栗四三杯」をダブル受賞した。 異次元の走りだった。箱根駅伝6区を野村が完全に攻略した。ポイントは序盤5キロの上りと傾斜が緩やかになる残り3キロだった。 下りの走りは得意で自信もあった。20年に館沢亨次(東海大)がつくった57分17秒の区間記録を更新し、さらには初の56分台に突入するため、野村は今季、5区の選手並みに上りの走りを強化した。そして、レースでは大胆に攻めた。 「(標高最高点の)5キロがゴールのつもりで飛ばしました。その後、下るので心肺は回復する」 残り3キロは傾斜が緩やかになる。それでも、約40メートルは下っている。「上っているように感じる」といわれるが、下り坂が得意で地力がある選手は、下り傾斜通りにスピードを落とさずに走ることができる。 野村は3年時まで故障が多かったものの、4年時は練習を継続して地力がついたことで残り3キロも攻略した。「1年間、56分台を目標に練習してきて、ラストランで出せて良かった。4年目は、けがすることなく順調に練習を積めていた成果です」。区間記録を30秒も更新する56分47秒で20・8キロを走破した野村は会心の笑みを見せた。17年に9区で区間賞を獲得した東洋大の兄・峻哉さんに続く“兄弟区間賞”も実現した。 101回目を迎える伝統の継走の新しい見どころが「初代MVP」だった。04年の第80回記念大会から最も活躍した選手に対し「金栗四三杯」が贈られている。これとは別に優勝チームの選手を対象にした「最優秀選手賞(MVP)」が新設された。圧巻の区間新記録をマークした野村がダブル受賞。「どちらかを取れたらいいなと思っていたので本当にうれしい」と笑った。今春の卒業後は、住友電工で競技を続ける。箱根から世界へ。本当の戦いはこれから始まる。(竹内 達朗) 〇…野村は、往路5区で区間新記録をマークした若林らから「転がり落ちろ!」などと寄せ書きされたシューズで区間新をたたき出した。「昨日(2日)の夜に若林や(マネジャーの)徳丸涼大が書いてくれました」と野村はチームメートに感謝。まさに「転がり落ちる」ような激走だった。 ◆野村 昭夢(のむら・あきむ)2002年11月10日、鹿児島・志布志市生まれ。22歳。有明中から鹿児島城西高に進み、21年に青学大文学部に進学。3年時に出雲1区6位、箱根6区2位、4年時に出雲2区6位、全日本1区4位、箱根6区区間新で区間賞。自己ベストは5000メートルが13分33秒88、1万メートルが29分39秒23。168センチ、54キロ。
報知新聞社