「がん」が発覚→職場に報告すべき?…仕事と治療を両立するための“ベター”な選択肢【医師が解説】
職場の上司や同僚にがんであることを打ち明けるべきなのか、休職中はどのような連絡をするべきか……。現役世代が「がん」になってしまった際、仕事と治療を両立させるための方法について、勝俣範之氏の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、“がんサバイバー”のための留意点をみていきましょう。
病名を伝えるかどうかは事前に検討する
【登場人物】 ■教える人……勝俣範之先生 あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。 ■教わる人……編集者O 身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。 編集者O(以下、O):がんになったら、やはり職場の上司や同僚などに伝えたほうがいいのでしょうか? 勝俣範之先生(以下、勝俣):治療で苦しい時期もあるし、会社には従業員に対する安全配慮義務もあるので、医師の立場としては伝えてほしいのですが、簡単にいえない問題ですね。その職場にがんの体験者に対する理解があるかどうかわからないからです。 編集者O:病名を伝えることで、どうしたことが懸念されるのでしょうか? 勝俣:患者さんにとって働きづらい状況が生じるかもしれません。「がんだから仕事ができない」と勝手に判断されて、第一線から外されたり、ほかの部署に回されたりする可能性もあります。 O:逆に、伝えないことによるデメリットもあるのでしょうね。 勝俣:患者さんが配慮を必要とする状況などになったとしても、対応してもらえないこともあります。ですから、同僚の方に対しても、どの範囲の人にまで伝えるかは大切です。一方で、がんだと伝えたあとは、人事部や上司とは、折々に今の状況を共有しておくのがよいと思いますね。
復職するときに留意するべきことは
O:がんになると現在の仕事を諦めて退職する人もいる一方、治療しながら同じ職場に復職したいと考える人もいると思います。 勝俣:仕事とがん治療を両立させているがんサバイバーは確実に増えつつあります。国としてもそうした方々を支えるためのガイドラインなどを定めて後押ししていますよ。 O:がんの治療で休職していた患者さんが復職しようと思ったときに、どういったことに留意すべきでしょうか? 勝俣:復職後に起こりうることを医師に確認して、あらかじめ会社側に伝えることが重要です。最近は復職が可能かどうか、どんなことに配慮しなくてはならないか、主治医の診断書を提出するよう求める会社も多いようです。 O:やはり、お医者さんの判断が重視されるのですね。 勝俣:社会的な傾向として、今は治療をしながら働きたいという方に対し、医師がそれを可能だと判断すれば、就業を継続できるように企業側が環境を整えることが求められています。自分がどんなふうに働きたいかを医師に伝えておくことが大事ですね。 勝俣 範之 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科 教授/部長/外来化学療法室室長