黒い噂が絶えないラオスの中国経済特区を行く
韓国政府は「旅行禁止地域」に指定
こうした中、韓国政府は2月1日、韓国語通訳などの虚偽の求人で現地に渡航後、フィッシング詐欺、仮想通貨投資詐欺などに加担させられ、拒否すると監禁、暴行を受けたとの報告が相次いだことから、ゴールデントライアングル経済特区を「旅行禁止地域」に指定した。 特区を巡る最新の動きとしては、2月5日にボケオ国際空港が正式に開港したことが挙げられる。特区から東に約5キロメートルに位置し、中国企業によるBOT(建設・運営・譲渡)方式で建設された。2500メートル滑走路を備える。現在は首都ビエンチャンへの路線しかないが、年内には中国やタイへの路線開設も計画されている。 特区当局は観光業振興をうたってはいるが、現状はカジノ以外に観光資源は乏しく、頼みの中国人の集客には至っていない。中国から陸路だと、ラオス北部のボーテン国境から約280キロメートルの道のりを6時間かけて来る必要がある。 そもそも 中国人にとって、ゴールデントライアングルは2011年にメコン川を航行していた中国船舶が武装勢力に襲撃され、船員13人が殺害された惨事に加え、近年の電信詐欺報道によって、極度に治安が悪い地域と認識されている。 特区当局と事業権者の金木棉集団は、航空路の開設で中国各地とのアクセスが改善されれば、中国人客が増えると期待しているが、空港が観光需要の起爆剤になるかどうかは未知数だ。 今回特区を実際に訪れてみて感じたことだが、趙偉氏が特区にこれだけ巨額の投資を行いながら、未だに目玉のカジノホテルでさえ人影は疎らで、お世辞にも観光業が軌道に乗っているとは言い難い。それでも事業失敗に至らない背景には、何か裏の収入源でもあるのではないかと訝らずにはいられない。
宮城英二