亀田和毅が世界前哨戦の3兄弟対決に準完全勝利も立ちはだかる2階級の壁
トレーナーを務める亀田興毅は「進歩」というキーワードを使った。 「あと10センチの距離を踏み込めるかを課題にしてきたが、2、3センチは踏み込めた。圧倒的に勝ったし、素晴らしい内容で進歩した。最後までお客さんの歓声が途切れなかったことが物語っている。和毅が持っている能力の高さを見せた。でも、ここはゴールじゃなくステップだから。課題もある」 素早いステップバックも含めたパーリングやスウェーのディフェンス技術に、左ジャブ、ワンツーの優れたハンドスピード。距離を潰した接近戦もこなすなど、バンタム時代に事実上の統一戦を戦った万能スタイルは存分にアピールした。1階級上の世界戦でも判定勝利を狙うのならば、今のスタイルで十分に勝機はあるのかもしれない。だが、「倒せない」「詰めれない」という課題を残した。彼ら亀田一家が目指す2階級制覇の高みが、もっと上のスーパーチャンピオンであるのならば、物足りなさが残る。 この日は、スーパーバンタムと、フェザーの間となる56キロ契約だったが、元々、一撃必殺のパンチ力のあるタイプでなかった和毅が、バンタム級から1階級上げることで、さらにパワー不足、相手の攻撃に対するリスク、恐怖増という壁が立ちはだかることになった。 “詰め”と“メリハリ”でカバーできるものではあるが、圧倒的なスピードで試合を支配しながら、そこからフィニッシュブローへつなげることができなかったのである。 10代からメキシコに拠点をおいていたため、ディフェンス重視のメキシカンスタイルが身についている。スピードとリズム、ディフェンス技術は申し分ないが、リスクを覚悟に攻め込む勇気に欠けている。それこそが、階級をひとつ上げるときに誰もがぶつかる壁でもある。3階級制覇を果たしている興毅トレーナーは、それを身をもって体験してきただけに、「あと10センチの踏み込みが必要」と訴えてきたのだ。 興毅トレーナーは「課題を挙げたらキリがない。上下の使い分け、強弱の使い分けとかね」と指摘した。 金平会長は「90点以上の出来。世界はチャンスがあればやる。無理にはやらない。チャンスがくれば受けて立つ」と今後のビジョンを示した。まだテレビ局のバックアップがないため、簡単に世界戦の舞台を作ることができない事情もあるが、和毅も、「チャンスがあればやりたいが、(世界戦には)タイミングがある。」と焦ってはいない。スーパーバンタムの“壁”をクリアする時間は、十分に残されている。 現在、このスーパーバンタムのクラスには、日本人世界王者が2人いる。 WBAの同級王者、久保隼(27、真正)は、9月3日に京都で同級2位のダニエル・ローマン(27、米国)との初防衛戦に挑み、指を痛めて防衛戦ができていなかったIBFの同級王者、小国以載(28、角海老宝石)も同級3位の岩佐亮佑(27、セレス)との指名試合を控えている。これらのタイトルの動向を見据えながら亀田和毅陣営は、2階級制覇のチャンスを伺っていく方針だ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)