5月17日は「高血圧の日」 放置すれば命の危険も…最新知見に基づく対策開始を
◇「高血圧パラドックス」が注目されている
日本高血圧学会の報告によれば、推定高血圧患者数は約4300万人とされています。これは、子どもを含む日本人の約3分の1が高血圧であることを意味します。しかしながら、医療機関で治療を受けている高血圧患者は約1000万人に過ぎず、約3000万人もの人々が「高血圧でありながら治療を受けていない」状態にあります。また、我が国における血圧のコントロール率(140/90mmHg未満の達成率)は約40%にとどまっており、年齢が上がるにつれて高血圧の頻度が増え、血圧のコントロールが不十分な割合も増加しているのが現状です。 高血圧に対しては効果的な降圧薬がいくつも開発されており、診察を受けて薬を飲めば血圧はコントロールしやすいといえます。であるにもかかわらず、多くの高血圧患者が降圧目標を達成できておらず、高血圧治療が十分に機能していないこの現状は「高血圧パラドックス」と呼ばれ、現在、重要な問題として注目されています。
●食塩感受性を意識する
高血圧の90%程度を占める本態性高血圧(遺伝的な因子や生活習慣などの環境因子が関与する、原因の分からない高血圧)では、主に塩分の取りすぎ、肥満、喫煙、運動不足やストレスなどの生活習慣が関係して発症するといわれています。高血圧と塩分の関係が密接であるため、高血圧の管理においては塩分の摂取量をコントロールすることが基本になります。 しかし、高血圧の中には、塩分摂取量を減らすことで血圧が顕著に改善するタイプの高血圧(食塩感受性高血圧)と、塩分の摂取量を減らしても血圧に変化が少ないタイプの高血圧(食塩非感受性高血圧)があることが分かっています。食塩感受性高血圧はそうでない高血圧と比較して、心臓や血管に負担がかかりやすく、これらに関連する病気のリスクが2倍以上になると考えられています。食塩感受性高血圧にかかりやすい特徴としては、両親が食塩感受性高血圧であることや腎臓障害があること、肥満傾向であること、中高年であること、塩分摂取後に血圧が顕著に上昇することなどが挙げられます。このようなタイプの高血圧の方は、より厳格に塩分を控える必要があります。 まずは、塩分を過剰に摂取しないようにする工夫が重要です。減塩を長期間続けるためのポイントは、加工食品の摂取を減らすことや、味噌汁の具だけを食べて汁を残すようなこと、食卓に塩の瓶を置いている人は置かないようにするなど、極端になりすぎないことが継続の鍵となります。そのほか、塩分を体から排出するカリウムや、血管を拡張して血圧を下げる作用が期待されるマグネシウム、不足すると血圧上昇につながるカルシウムなどの栄養素を積極的に摂取することも重要です。併せて、野菜、果物、イモ類などを摂取することも大切です。