奥歯の“白い被せもの”の保険適応条件緩和【2024年に注目された医療】#4
【2024年に注目された医療】#4 保険歯科診療において今年のトピックスは6月から奥歯の白い被せものの適応条件が緩和したことだろう。一般社団法人「ジャパンオーラルヘルス学会」(旧日本歯科人間ドック学会)副理事長で市川歯科医院(東京・虎ノ門)の市川信一院長が言う。 歯を削らない虫歯治療はここまで進化している…ドリルも麻酔も不要 「一般にはまだその情報が浸透していないせいか、患者さん自身が積極的に求めてくることはありませんが、条件に合致する人に説明すると、大半の患者さんはCAD/CAM冠を希望されます」 CAD/CAM冠とはレジン(プラスチック)とセラミック(陶器)を混ぜたハイブリットレジン素材をコンピュータで設計したデータを基に機械で削り出して作る白い被せもののこと。従来のものより短時間で作れるメリットがある。ほかに天然歯に近いから大口を開けて笑っても気にならない、金属を使ってないので金属アレルギーの人も心配ない、などの利点があるとされる。 しかし、これまで奥歯に関しては、CAD/CAM冠は金属アレルギーのある人を除いては第二大臼歯が上下左右4本すべてがそろった人にのみ、第一大臼歯への使用が認められていただけだった。奥歯には強い咬合圧がかかるからだ。 それが今回の改定では条件付きながら第一大臼歯、第二大臼歯までCAD/CAM冠の使用が認められた。 「必須条件はCAD/CAM冠を使用する歯の左右反対側にブリッジを含めてしっかりかみ合った大臼歯が残っていること。加えて①CAD/CAM冠を装着する歯と左右同じ側にしっかりかみ合う大臼歯(ブリッジを含む)が残っていて、CAD/CAM冠に力がかかりすぎない、あるいは②CAD/CAM冠を装着する歯と左右同じ側にしっかりかみ合う大臼歯(ブリッジを含む)がないか義歯の場合は、その手前までの歯がしっかりとかみ合わされることが条件となりました。当然ですが、金属アレルギーの人はこの限りではありません」 公的保険が使えるので値段も安く、自然歯に近いのなら言うことないように思えるが、問題はないのか? 「CAD/CAM冠に使われるハイブリットレジン素材は硬めですが、使用するうちに摩耗する恐れがあります。そうなるとかみ合わせが悪くなり、顎関節症と咬合性外傷を発症する心配があります。一般的には問題なくても、歯ぎしりする人や食いしばりがある人などは、使用に当たっては担当の歯科医師と十分相談することが大切です」 また、長期間使用すると変色するともいわれている。 「個人的には、第二大臼歯をより長持ちさせるなら、自費治療で歯の硬さに近い金合金が、保険治療ならパラジウム合金がベストだと考えています。とくに、高齢者は審美性よりも耐久性を重視した治療をお勧めするようにしています」