“天ぷらの神様”と称される早乙女哲哉氏から免許皆伝!「みかわ是山居」の系譜を継ぐ「あらたみかわ」に名店の予感!
さぁ、待ち焦がれたその瞬間がやってきました。箸を上から落としてスパッと真っ二つ!
中からふわ~っと立ち上る湯気に歓喜の声があがります。衣はサクサクとしっとりが共存し、皮はカリッと香ばしい。その奥からフワッフワのふっくらとした身が現れます。塩も天つゆも必要ないくらいしっかりとうまみを閉じ込める技術は、さすが名手のお墨付き!
〆は天丼か天茶をチョイスします。均等に火を通すため卵を多めにした衣を纏った「青柳の小柱のかき揚げ」はサクサクとした軽い仕上がり。砂糖を使わず味醂で味を調えた「かえし」は甘さを感じさせず、小柱のうまみを際立たせます。
天ぷらの“三種の神器”は衣、タネ、油
天ぷらの根幹をなすのは「衣」「タネ」、そして「油」です。小川さんは、振るった小麦粉、卵、水は冷蔵庫で1日寝かせ、一定の温度にしてから作ります。「卵と粉を“混ぜないように混ぜる”のです。みかわの旦那はこれを“粉を解く(と)く”と言いますが、グルテンを発生させないよう、上半身と肘を使って粉をほどくように混ぜます」と、独特な動きで衣を完成させていきます。
「ボウルの中の衣はタネをつける上の部分が一番濃厚で、底にいくに従って薄くなるように層ができています。揚げはじめは上の層しか使えないのですが時間と共に粉が沈んでいき、だんだん底の層も上と同じくらい濃くなって使えるようになるので、衣を作り足す必要がない。これが『みかわ』の技術です」(小川さん)
「はじめはよくわからないまま作っていたのですが、お客様の人数、食材の大きさ、温度、湿度……、一本一本の揚がった状態を見て衣がどう変化したのかを記憶に留めていくと、自ずとどうすれば良いか感覚で掴めるようになります」とも。衣作りは少しのミスが命取り。混ぜ方一つ間違えただけで作り直すしかありません。それだけに毎回、膨大な記憶のデータをもとに緻密な計算をして完璧な衣を作り上げるのです。
「天ぷらは揚げあがりの時間を計算して油の温度と量を決めています。ゴールをイメージしないとスタートできない」と言う小川さん。それは個々の揚げ始めと終わりのことだけでなく提供するタネ全体に対しても言えること。揚げているタネのことに集中していながら頭では次に揚げるタネのことを考えているそう。衣も油も感覚的だと思いきや、実は論理的だと知り、驚くばかりです。