離婚で議論される「養育費」って何? 算定基準変更で増額されたワケ
最高裁が養育費の新しい算定基準をまとめ、公表しました。改定は16年ぶりだと言います。離婚調停などで話し合われる「養育費」とは一体どのようなもので、なぜ見直しとなったのでしょうか。
「離婚しても同程度の生活」が基準
民法では、離婚などで子と離れて暮らす親に「配偶者や子に自分と同程度の生活水準を保障する義務」(生活保持義務)を定めています。養育費はこの義務に基づいて負担する費用です。 算定表は、子を引き取る側の親と、離れる側の親それぞれの収入や、子どもの人数、年齢に応じて詳細に決められており、養育費を導き出すための「基準」として活用されています。裁判官や調停委員は、これをもとに夫婦の主張などを踏まえて最終的な金額を決めます。
「月1~2万円増」か「変更なし」
仮に15歳未満の子ども1人を引き取る親の年収が300万円、相手の年収が500万円だとして、月額の養育費を考えます。この場合、これまでの算定表では「2万円~4万円」でしたが、新しい算定表では「4万円~6万円」となります。 改定の結果、養育費は1万円~2万円程度増額されるか、額が変更されないかのどちらかとなり、減額されるケースはありません。
子どもがスマホを持つ時代に 社会情勢を反映
なぜ今、養育費の算定表が改定されたのでしょうか。最高裁が公表した報告書では、その理由のひとつに「標準算定方式・算定表の提案から15年余りが経過していることを踏まえ、これを、より一層社会実態を反映したものとすることに加え、算定方法に改良すべき点がないか検証・対応する」ことを挙げています。 従来の算定表は2003年に初めて公表され、必要経費の算出に使う統計データは当時の社会情勢を踏まえたものです。当時と比較して、税率引き上げや物価変動など生活にかかる支出が増えているほか、「通信費」については、仕事をしている親だけが通信機器を使っているという前提で計上していました。 近年、未成年者にもスマートフォンをはじめとする通信機器が普及するなど家庭の支出傾向は変化しています。こうした中、「生活実態に合っていない」という当事者からの指摘などを受け、算定方法を見直したのです。
過去の取り決め額への自動適用はなし
算定額について、報告書には「裁判所の最終的な金額についての判断がこの算定表に示された金額と常に一致するわけではありませんし、当事者間の合意でも、いろいろな事情を考慮して最終的な金額を定めることが考えられます」と記されており、あくまで目安と認識しておく必要があります。 また、今回の改定を受け、過去に取り決めた養育費が自動的に新基準に適用されることはありません。