上村文乃がチェロ・リサイタル新シリーズを立ち上げ 「チェロは自分自身」
個性的なプログラム、モダン楽器と古いピリオド楽器を弾き分け、室内楽にも積極的な若手チェリスト、上村文乃(34)が新しいシリーズを立ち上げた。「A OF CELLO」。始まりのA、自身の名前AyanoのA、アートのAなど、さまざまな意味が込められている。「ヨーロッパの留学から帰り、日本で活動していくうえで、さらに自分を高め、奮い立たせる思いでシリーズを立ち上げました」と話した。 ■自分の決意感じて 上村は桐朋学園大ソリストディプロマコースを経て、ドイツのハンブルク音楽演劇大、スイスのバーゼル音楽院とヨーロッパで7年間生活し、2020年に帰国した。モダンチェロでスタートしたが、バーゼル音楽院で古楽を学び、帰国後、日本の古楽器オーケストラ、バッハ・コレギウム・ジャパンのチェロ奏者としても活動している。2月には若手チェリストに与えられる第22回齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞した。 新シリーズのプログラムの組み合わせが上村の指向を感じさせる。最初はハンガリーの作曲家コダーイが1915年に作った無伴奏チェロ・ソナタ。低音の2弦を半音下げる変則調弦で演奏される。ハンガリーの民族舞曲に基づき、高度な技巧が駆使され、3楽章で30分近くかかる。 上村は「コンサートの最後に弾いてもいい大曲です。技術にフォーカスされがちですが、コダーイは歌が好きで、合唱曲をたくさん作っています。歌を器楽で表現しています。最初に自分の決意を感じてもらいたかった」と話す。 6曲あるバッハ唯一の無伴奏チェロ組曲のうち第1番も聞きものだ。この組曲は長く忘れ去られていたが、20世紀初めにカザルスが再発見し、現代のチェリスト必須のレパートリーとなった。有名なプレリュード(前奏曲)で始まり、アルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエット、ジーグという舞曲で構成される。 「今ではバロックチェロで弾くことも多い作品です。バロックチェロとモダンチェロでは別な表現になります。バロックチェロを弾くとバッハ時代の気持ちになれるのですが、今回はモダンチェロが映える演奏をしたい」 ■「黒田節」日本初演