芸人→最弱プロレスラーの異色経歴で…なぜ下関に“ベイスターズの店”を? あるファンの数奇な人生「若い子は下関で生まれた球団だと知らないんです」
クライマックスシリーズでの怒涛の5連勝などで日本シリーズまでたどり着いた横浜DeNAベイスターズ。熱狂的なファンも多い同球団だが、その裾野は地元・神奈川だけではない。「原点」ともいえるチーム誕生の地・下関に店を開いた、とあるプロレスラーの話。《全2回の1回目/後編を読む》 【現場写真】ホエールズ「生みの親」の銅像も⁉…お宝グッズも満載“ナゾのプロレスラー”が下関に開いた豚丼屋「B☆WHALE」の超個性的な内観…1998年&2024年の日本シリーズでの横浜ナインの活躍も見る カモン関門。窓の外は関門。外国の輸送船がいったりきたり。海の向こうは福岡ドーム。最終関門ソフトバンクホークス。源平・巌流島・幕末と大洋。なんて決戦と革命の息吹あふるる下関は捲土重来。やった。ついに日本シリーズだ。 10月21日。セ・リーグクライマックスシリーズファイナルステージ第6戦。 3連勝から逆王手を掛けられ圧倒的なジャイアンツ勝利の空気のなか、劣勢をひっくり返してベイスターズがCSを制覇した瞬間。下関市観音崎町にある豚丼屋「B☆WHALE」の窓から、大洋ホエールズ/ベイスターズファンたちが闇の向こうの福岡へ向かって吼えたという。
なぜいま「下関でベイスターズが熱い」のか?
2024年秋。ベイスターズ誕生の地、下関が俄かに活気を帯びはじめている。 その中心にあるのが、昨年8月23日にオープンした「B☆WHALE」だ。店主の名はラブセクシーヤング。下関市出身、西口プロレスのレスラーである。デビュー以来、14年目にタイトル戦初勝利を挙げるまで負け続け、最弱の名をほしいままにする“世界一天井を見てきた男”は、何の因果か重度のベイスターズファンを患っていた。 小学校3年生だった89年、下関球場で行われたオープン戦。ルーキー谷繁元信が巨人のエース斎藤雅樹から打ってしまったプロ初ホームランを目撃し、ホエールズに心奪われた。この横浜大洋ホエールズというチームは僕らの町で誕生したプロ野球の球団だと聞き、少年ヤングの心は誇らしさで張り裂けそうだった。 しかしホエールズは下関に年に一度、オープン戦にしか来てくれない。それ以外はテレビで観ることも叶わず、学校のクラスメートたちにいくら大洋信仰を啓蒙しても、「ホエールズがベイスターズになっちまった」と騒いでも、興味を持ってくれる友達もほとんどいない。 ヤングは悔しかった。そして、誕生の町なのに、何もない下関の町に腹が立っていた。ここには何もない。横浜に行きたい。ベイスターズの本拠地である横浜は、必然ヤングの憧れの地となった ヤングが高校3年生になった1998年。ベイスターズは日本一になる。下関では優勝パレードが行われ、権藤博監督以下、石井琢朗らがオープンカーから手を振っていた。あの時、沿道にひしめいた人たちのよろこび、叫び、大盛況に沸いた下関の町は、ヤングの脳裏に今も深く焼き付いている。 「あの歓声が忘れられなかったんでしょうね。そして、あのパレードが決定打となって、上京することを決意しました。住んだのは横浜線の相原でしたけど、神奈川は僕にとっては天国でした。ハマスタにはすぐに観に行けましたし、毎日のようにtvk(テレビ神奈川)でベイスターズ戦が見られて……」
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