鹿児島県警の不祥事巡る百条委設置、裁判理由に「反対」…再検討時期も示さない自民県議団の判断は議会不信を招きかねない
鹿児島県議会の最大会派である自民党県議団(34人)は5日、一連の県警不祥事を巡る調査特別委員会(百条委員会)を現時点では設置に反対することを決めた。裁判と並行した調査は不可能と判断した。12日開会の9月定例会で百条委は設置されない公算となった。 【関連】隠ぺい疑惑の鹿児島県警「百条委」9割超が設置望む 南日本新聞LINEアンケート 「県議会が真相究明を」「膿を出し切って」 態度先送りの自民へ批判も
冒頭以外非公開の総会で決めた。終了後の取材に応じた西高悟会長らによると、全会一致だった。本部長の隠蔽(いんぺい)を主張する前生活安全部長の裁判が始まっておらず、「時期尚早」との意見が多数を占めた。 県民から「野川明輝本部長の隠蔽疑惑を徹底追及すべき」との意見が多数寄せられたものの、「警察庁や公安委員会が隠蔽の指示はなかったと結論づけており、われわれは信じるしかない。県民が望む議論ができない」と述べた。 一方で「裁判の動向次第で、いつでも設置できる」と含みを持たせた。 百条委設置は、野党系会派の県民連合(7人)が6月に提案。自民県議団は可否を判断する予定だった7月10日の総会で結論を持ち越し、同19日と8月6日の閉会中の総務警察委員会での質疑を判断材料にするとしていた。 無所属の5人と共産(1人)は賛成。公明(3人)は「常任委員会とは別に(百条調査権のない)特別委員会を設置して審議する必要性も検討中」とした。
県民連合の福司山宣介会長は「裁判中の問題とは切り分けて議論することはできる」と反発。「県民の期待に応えておらず議会の役割を果たしていない。捜査の一時中断がなぜ発生したのかなど要因と再発防止策を議論し、県警の信頼回復につなげるべきだ」と話した。9月定例会に百条委設置の動議か決議を提出する方針。 ■百条委員会 地方自治法第100条に基づき、地方議会が設置し、自治体関係者の関わる疑惑や不祥事の真相を究明するために開く。通常の委員会より強い権限を持ち、調査対象の関係者の出頭や、証拠、記録の提出を要求できる。正当な理由なく出席や証言を拒否したり、うその証言をしたりした場合は、罰金刑や禁錮刑が科せられる。設置には本会議で出席議員の過半数の賛成が必要。 【解説】 最大会派である自民党県議団の反対で、鹿児島県議会は地方議会の「伝家の宝刀」といえる調査特別委員会(百条委員会)の設置を自ら封じることになった。不祥事が相次ぐ県警への不信感は募るばかり。公判中の裁判と同時進行になることを理由にした判断は、県民の負託に応えているとは言いがたい。