事件や災害のニュースで心がザワついてしまう時どうしたらいい?医師が解説!
メンタルヘルスと社会問題のつながりとは? インディペンデント・メディア「Blossom The Project」を立ち上げた中川・ホフマン・愛さんと、精神科医の藤野智哉先生にお話しを聞きました。 【画像】メンタルヘルスを整えるアイデアまとめ
「メンタルヘルス」と社会問題のつながり
――2020年、中川さんは、「Blossom The Project」を立ち上げていますが、きっかけは何だったのでしょうか? 中川: 大学でメンタルヘルスに関するサークルに入ったんです。専門家から実際にカウンセリングのトレーニングを受けたり、いろんな知識を学んだりして、私が17歳のときにこのような知識があったらどれほど助かっただろうと感じました。そんななか2020年にパンデミックが起きて、私のまわりにもメンタルの不調を抱える人が増えました。今、何ができるだろうと考えたとき、大学で学んだことを少しでも生かせたらと思ったんです。 ――メンタルヘルスと社会問題をテーマにしたのはなぜですか? 中川: 私は母が日本人、父が南アフリカ人で、大阪で生まれ、カリフォルニアへ移住して10歳までを過ごしました。その後、両親の離婚を機に日本へ戻ってきたのですが、学校内でミックスの生徒は私だけ。日本語は話せても読み書きはまったくできない状態で、「バカハーフ」「バカ外人」などと言われ、ひどいいじめを受けました。私がうつ病になったのは、こうしたマイクロアグレッション(小さな攻撃性。無自覚な差別を指す)を感じてきたことや、それによるストレスが大きな原因としてあったので、メンタルヘルスの裏には、人種差別をはじめさまざまな社会問題が関わっているということが、実感としてあったんです。
個人の心に影響を与える社会問題
――個人のメンタルヘルスと社会問題は、やはり関係しているのでしょうか? 藤野: 大いに関係していると思います。特にショッキングなニュースや災害があると、引っ張られてしまう人は多いですよね。「ウェルテル効果」ともいわれますが、コロナ禍、芸能人が立て続けに自殺したことがあったと思うのですが、そのあとの自殺率はやはり引き上がり、関連の可能性が示唆されました。 中川: 著名な方が亡くなられたとき、「Blossom The Project」にもたくさんの方から「どうしていいかわからない」といった声が届きます。日本は、G7のなかで最も自殺率が高く、なかでも性的マイノリティの方の比率が高い。それは、LGBTQコミュニティを守る法律がない、G7のなかで唯一同性婚を認めていないといった、根本的な法のシステムが影響している可能性があります。そのなかでいくら「頑張ろう」「セルフケアしよう」と言っても、当事者にとっては無理な話ですよね。「法律から変えていかないと何も変わらない」と改めて感じました。 藤野: 権利を与えられてこなかった人たちが、「しんどい」と訴えたり、当たり前の権利を主張したりすると、世間では図々しいだとか言う人が現れます。でも、そもそも当たり前の権利を与えてこなかったほうがおかしいのだということに気づいてほしいですね。 中川: そのためには、まずみんなの意識が変わっていかないと。私たちの生きる社会にどんな偏見や差別があるのか、「Blossom The Project」でももっと取り上げていきたいと思っています。