【西本聖】ヤクルト奥川恭伸はフォーム見直さなければ長い回投げられない
<ヤクルト6-1阪神>◇29日◇神宮 セ・リーグは混戦とはいえ、4連敗で最下位にいるヤクルト。前日の試合が雨で中止になったが、吉村はスライドせず、奥川が先発した。 【写真】奥川恭伸の投球フォーム 前日の中止決定が遅く、吉村に負担をかけたくなかったのだろう。それでも、中14日の間隔を空けて調整させた奥川への期待は大きかったはず。ヤクルトの浮上を考えた上でも、大きなカギを握っていた。 初回の立ち上がりを3者凡退に打ち取ると、その裏に味方打線が3点を挙げた。ストライクゾーンにどんどん投げ込んでくる奥川の投球スタイルからすると、願ってもない展開。決して油断していい点差ではないが、制球力を重視する投手向きの流れになった。 しかし2回は先頭打者の大山に3ボールになり、フルカウントになってから外角を狙ったスライダーが引っかかり過ぎ、四球になった。この引っかけが気になったのか、その後のスライダーはすっぽ抜けてしまっていた。奥川にしては珍しく2四球を与えてピンチを迎えるが、坂本、小幡の非力な打者に助けられたような内容だった。 3回からは真っすぐとフォークのコンビネーションに切り替え、2点の追加点ももらった。前回の登板が79球で、間隔を空けた今回は90球から100球ぐらい投げると思っていたが、5回に1点を失い、5回87球でマウンドを降りた。 奥川には高いレベルを求めてしまうため、どうしても要求するレベルが高くなってしまう。5回は真っすぐが高めに大きく抜け、明らかなスタミナ切れだった。この回23球を投げたうち、真っすぐは6球しか投げていない。そのうち、高めに要求した真っすぐが1球で、低めに投げられた真っすぐは1球しかない。奥川も首を振って変化球を投げていた。 自分の投球が思い通りにいかなくても、大量失点しないような「引き出し」を持っている。今試合のようにスライダーが悪ければフォークに切り替えられるし、ベテラン捕手の中村のサインに首を振って投げられるのも、自分で駆け引きができる証拠。何より久しぶりの本拠地登板で、負けられない試合で結果を出せるのは大したものだ。 しかし、投球内容もスタミナも、本来の能力からすれば不満が残る。 まだ、全力で投げたときにヒジの不安もあるだろう。しかしその不安を拭い去るのも、スタミナをつけるのも、投げ込んでいかないと強化されない。それで肘に負担がかかるなら、投球フォームも見直さなければいけない。テイクバックをコンパクトにして左肩を開かず、腕が振り遅れないようなフォームを追求しないと、長いイニングは投げられないと思う。復帰2戦目で2勝は言うことなし。それでも、もっともっと高いレベルを目指してほしい。(日刊スポーツ評論家)