誘拐監禁、性被害を告白しても警察に信じてもらえず…「被害女性の届かぬ声」がテーマの作品が増加
増えつつある「聞き入れられなかった声」をテーマにした映画
『アメリカン・ナイトメア』に限らず、ここ数年、被害に遭った女性をテーマにした作品が増えている。フィクションであれノンフィクションであれ、関係者の心に寄り添っているだけでなく、被害者の声が聞き入れられない理由や、犯罪が隠蔽されやすい仕組みも描写されている。デニースは映画『ゴーン・ガール』と関連づけられ自作自演を疑われたが、丁寧につくられた作品からは学べることも多い。その一部を紹介しよう。 『スキャンダル』(2019年) FOXニュースで実際に起こった女性ニュースキャスターへのセクハラ騒動を描いている。 『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』(2023年) MeToo運動のきっかけとなった映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる性的暴行を告発した女性記者2人を追った物語。 『アフター・ミー・トゥー』(2023年) 韓国でも起こったMeToo運動のその後を追った4話オムニバスのドキュメンタリー。 『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年) 性的暴行を受けた被害者本人ではなく、周囲の人や加害者に焦点を当てた作品。フィクションだからこその物語展開で、作品としてのクオリティはこのリストのぶっちぎりNo.1。 『アシスタント』(2023年) 権力者による性的搾取や性暴力がなぜ告発されにくいのかを描いた作品。 24年1月、ジャーナリストの伊藤詩織氏が初監督を務めた映画『Black Box Diaries(原題)』がサンダンス映画祭に出品されたことで話題となった。自身に起こったことを自らが調査した同作の日本公開は現時点では未定だが、公開されれば『アメリカン・ナイトメア』同様に、先入観が被害者に与える苦しみや、報道のあり方が取り上げられるだろう。
文:中川真知子