<パナマ文書>21万社の情報公開 「秘匿性の解除」が今後の争点か?
タックスヘイブン側は「秘匿性の解除」に妥協しない構え
パナマ文書はその規模があまりにも膨大だったため、多くの国で連日ニュースとして取り上げられてきました。しかし、この手のリークは2013年の「オフショアリークス」を皮切りに、「ルクセンブルグリークス(2014年)」、「スイスリークス(2015年)」と毎年発生しており、経済開発協力機構(OECD)などが課税逃れへの対応を強化する動きを進めています。イギリスでは12日にロンドンでキャメロン首相も出席して、マネーロンダリングにとって好都合なタックスヘイブンの秘匿性を解除するための「腐敗防止サミット」が開かれますが、ヴァージン諸島を含む属領からは秘匿性の解除に反対する声も多く、ヴァージン諸島は代表団の会合への出席を明確にしていません。規制強化を図りたい先進国と、タックスヘイブンの恩恵を受ける国や地域との温度差が垣間見えます。 この数年、先進国の間でタックスヘイブンを利用した節税に対して規制を強化する動きが強まっていますが、アメリカはどうなのでしょうか? パナマ文書のインパクトがあまりにも大きかったため、タックスヘイブンといえばカリブ海の島々というイメージが定着しつつありますが、アメリカ国内でもデラウェア州やネバダ州、ワイオミング州などはタックスヘイブンとして知られています。10日にICIJが公開したデータベースに21万社以上のペーパーカンパニーが登録されているという話は前述しましたが、デラウェア州ウィルミントンにある2階建ての商業ビルには28万社以上が法人登記しています。 ペーパーカンパニーの登記が州の大きな財源となっているデラウェアは、州全体の人口が90万人弱にもかかわらず、法人登記数は110万に達しています。州の財政が潤っているため、消費税もなく、住民にとっては暮らしやすいデラウェア州。しかし、デラウェア州での法人登記によって、他州では法人税を徴収できなくなったケースが相次ぎ、ニューヨークタイムズ紙は2012年に「過去10年で(デラウェア以外の州は)1兆円近い税金を取り損ねた」と報じています。タックスヘイブンの規制に積極的な姿勢を見せるオバマ政権ですが、自国のグレーゾーンの規制にも果たして着手できるのでしょうか? (ジャーナリスト・仲野博文)