最も飛ばないプロ・杉原輝雄「ポーカーフェイスは、その後のプレーでミスを取り返してくれるかもしれんエネルギー源や」
「杉原流ポーカーフェイス作戦」で疲れや心をコントロール
決勝ラウンドの1・2回戦は、18ホールのマッチプレーとなる。この日も、「杉原流ポーカーフェイス」を決め込むことが、私の作戦だった。1回戦は、出だしで2アップし終始リードを保てていたが、15~17番ホールで3連続ボギーを打ち、1アップまで迫られてしまった。 普段なら、慌てふためいて動揺を隠せないところだが、とにもかくにもポーカーフェイス、平静を装った。結果、18番は無難にパーを確保して引き分け、ワンアップで勝利できた。 2回戦は、取ったり取られたりの激戦となった。前半はワンダウンで折り返し、10番で私がバーディでオールスクェアに戻したものの、直後の2ホールを自分のミスで取られてしまった。残り6ホールで2ダウンはかなりのピンチだが、やはりポーカーフェイスは崩さなかった。 そもそも、1.5ラウンドすらたまにしかやったことがなく、28ホール以上をプレーするのは38年ぶりかと思う。70歳の身体には疲労も濃くなってきていたが、そこも顔には出さず、「疲れた」と口にも出さず、黙々と目の前の一打に集中した。すると13番からパー・バーディ・パーで3連続アップし逆転、残りは3ホールとなった。 16番のPar3では、ワンピンにつけたが入らずお互いにパーで分け、アップドーミーの17番に進んだ。ここで、思わぬアクシデントに見舞われる。ティーショットで右足がすべってしまったのだ。結局、このホールを落として、またもやオールスクェアとなり、最終ホールへ進むことになった。 アクシデントによって追いつかれ動揺しないはずもないが、それでも深呼吸してポーカーフェイスを貫いた。18番Par5、私は50cm、相手は2mあまりのパーパットを残す展開となったが、対戦相手はこの日パットが好調でこのパットも沈めてきた。 ついに、サドンデスのエキストラホールへと進むこととなったが、その1ホール目、つまりその日の37ホール目、私はグリーンを外し寄らず入らずでボギー。相手のアプローチも寄らなかったが、5mあまりのパーパットを決められて万事は休してしまった。 勝ち進めなかったのは残念だし悔しいが、62歳の対戦相手にその日の37ホール目まで、互角に戦えたことは、70歳にしてはよくやれた方だと思う。これも「杉原流ポーカーフェイス作戦」のお陰といっていいだろう。