若手世代の名コンビ尾上右近&中村壱太郎、恋人になぞらえ6年前共演からの進化語る
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム> 若手世代の名コンビとして人気が高い歌舞伎俳優尾上右近(32)中村壱太郎(34)が「壽初春大歌舞伎」(1月2~26日、東京・歌舞伎座)の「二人椀久」で共演する。歌舞伎座での共演は1年ぶりとあって期待が高まる。取材会では、熱いコンビぶりを見せてくれた。 椀久こと椀屋久兵衛が、恋い焦がれる遊女松山のまぼろしと出会い舞い踊る作品。2人の配役で18年の右近の自主公演「研の會」で上演されている。 右近は18年の上演を振り返り「プライベートでも深い関係になって結婚する…という気持ちが分かりました。公演が終わって次の日、壱太郎さんが地方に行かれたんですけど、すごいさみしくてさみしくて。空を見上げて、なんでこの空を一緒に見られないんだろう、と。それくらいのめり込んだ」と話した。 研ぎ澄まされ、余計なものがそぎ落とされた世界観が魅力の演目だが、壱太郎は「『研の會』の時は思いが強すぎて、引き算どころじゃなかった。付き合いたての恋人みたいだった。あれから6年たって、あっちはあっちで頑張ってるし、また会えるでしょ、みたいないい感じになった」と、恋人関係になぞらえて説明してくれた。 2人も「二人椀久」を楽しみにしている。右近は「これぞ2人の『二人椀久』だというものをお届けしたい。令和にキラキラと輝く『二人椀久』にしたい」と自信を持って話し、壱太郎も「究極に美しい舞台にしたい。シンプルな世界で、松と月と僕らしかいない。少ないパーツでどれだけ究極の美しい世界を作れるかという美学がすごく好き」と笑みを見せた。 近年、大役を演じることが多くなっている2人。大きな役をつとめることについて問われた2人の言葉が印象的だった。右近は「僕らがこれだけやらせてもらえるようになって『抜てきです』なんて言ってたら、後輩たちはなんて言っていいのか分からなくなっちゃう。夢を見せていく存在にならないといけない」と言うと、壱太郎は「ここまで来ると自分追っつかなくなっちゃうんじゃないかなと思うこともある」と吐露した上で「(大役は)当たり前だぞ、と言い聞かせてる」と答えた。大きな役、演目に挑み、そのつど期待以上のものを見せてくれた2人だが、心中に渦巻く気持ちの一端を知ることができた気がした。 神妙に答えるシーンもあったが「その時感じたことしかできない」(右近)「この取材会と同じ心境で立てたら鉄人です」(壱太郎)と、舞台を見なければどうなっているか分からない楽しさも示唆した。 「二人椀久」は5代目中村富十郎さんと4代目中村雀右衛門さん、片岡仁左衛門と坂東玉三郎といった名優コンビが演じてきた。名コンビと言われることについて、右近は「プレッシャーとして感じないタイプなので、あくまでも自分たちらしくやっていきたい」、壱太郎も「自分がやってきたことは間違ってないと信じれば、必ずいいものになると思う」と力強かった。【小林千穂】