「夏こそ160キロを出したい」投手歴わずか2年…プロ注右腕の“放言”に監督激怒のワケは? ソフトバンクからドラフト1位指名・村上泰斗に訪れた転機
ソフトバンクからの1位指名で村上泰斗(神戸弘陵高)の名前がモニター画面に表示されると、本人の目からはふいに涙がこぼれ落ちた。 【写真】「ど、どこから球が…?」柔軟過ぎて出所が見えないソフバン1位指名・村上泰斗の“衝撃のフォーム”…実際の試合での投球風景&盛り上がった今年のドラフト会議の様子も見る 「ホッとしたのが一番です。前の日まで緊張はなかったんですけれど…選ばれなかったらどうしようというのもあって。(ドラフト当日は)緊張というか、心臓がバクバクでアドレナリンが出ていました。最初は実感がなかったです」 甲子園出場経験はないが、2年夏の大会前にストレートが152キロを計測し、近畿圏内の高校野球界では名の知れ渡った本格派右腕。中学時代までは内外野、捕手とあらゆるポジションもこなした。 投手を本格的に始めたのは高校に入ってから。中学時代から投手転向を熱望するもなかなかその機会に恵まれず、高校入学後に岡本博公監督に直訴。1年秋にはストレートが142キロをマークするなど徐々に才能を開花させた。
2年生の6月、152キロをマーク…「プロ注」に
ただ、ゼロから積み上げてきた投手としての日々は、決して平坦な道のりではなかった。 「しんどいことの方が多かった」と本人。1年目の冬は本格的な身体作りのため体重増量を試みるも、もともと太りにくい体質のため、体重アップは右肩上がりとはいかなかった。 それでも持ち前の器用さでスライダー、フォーク、ツーシーム、カットボールなど多彩な変化球を操れるまでの投手に成長。そして2年生になって6月に練習試合で152キロをマークした。 初めてエース番号を背負った昨秋の県大会3回戦の彩星工科では先発のマウンドに立ち、3回までは快調にストライクを並べて6個の三振を奪った。しかし4回に二死走者なしから四球を出し、長打で1点を失うとさらに連続四球を与え、4回途中1失点で降板した。 152キロを計測して以降、村上の現状を伝える記事にはスピードの見出しがついて回った。ピッチャーをやっている以上、実力を測る上でスピード数値はもっとも分かりやすい指標になる。高校生ならなおさら、どうしてもスピードに目が行きがちだ。 だが、彩星工科戦の翌朝、新聞記事に載っていた村上のコメントの一部が岡本監督の逆鱗に触れることになる。 「試合には負けてしまいましたが、この冬は身体を作って夏こそは160キロを出したい」 岡本監督は言う。 「いやー、あの記事は、自分でもちょっと腹が立ちましたね(苦笑)。記事を読んだ後、村上を呼んで、かなり厳しく言いました。試合はスピードガンコンテストじゃないと。スピードよりも、もっとやるべきことがあるんじゃないかって。そんな話はしました」 村上は当時の自分をこう振り返る。 「自分が勝ちに導かないといけない立場なのに、あの頃は球速を出すことばかり考えていました。本当のエースはチームを勝たせるピッチャー。それなのに自分のことばかり考えていました。そこでやっと色んなことに気づけたと思います」 昨秋の時点の村上は、力で押せても走者を背負うと力んで自滅する場面も散見された。 「力を入れても棒球になって打たれてしまうので、質の部分を求めて行けと(チームで指導する同校OBで西武、中日でプレーした)前田(勝宏)さんからも教わってきました。ボールの回転数、回転軸もこだわって、スピードより質の部分を意識しないと、と思うようになりました」
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