モンベル、被災地支援に「アウトドアの知恵」 約30年の積み重ねを生かす
能登半島地震においても自社製品だけでなく、さまざまな企業の協力を得た。新富士バーナーのアウトドア用ガスバーナー、永谷園フーズの食品、味覚糖の菓子など支援物資の提供を受け、被災地に届けている。
ただ、災害によって被災状況が異なるため、予定通りにいかないことも多い。能登半島の独特の地形が支援の手を阻み、いまだ救済、復旧作業が遅れている。発災直後は羽咋市の前線からでも被災地の珠洲市まで片道約6時間、輪島市まで約4時間かかった。「私たちは緊急車両扱いで入ることはできたが、道路状況がかなり悪く、混んでいたので活動時間のロスはあった。現在は仮設トイレが設置されたり、2次避難所に移動したり支援の体制が整ってきているが、発災直後に行政の支援が行き届いていないときにスピーディーに確実に困っている方に物資を届けるのが、アウトドア義援隊の目的」と、大塚氏は話す。
野外活動の経験がいざというとき役立つ
能登半島は、同社が推進協議会を立ち上げて全国の自治体と取り組むジャパンエコトラックに賛同し、ルート設定したエリアのひとつ。豊かな自然の中を自転車やトレッキング、カヤックなど人力による移動手段で楽しみながら旅しようというもので、道標を立てたりして思い入れがある土地だ。「棚田や見附島など地震や津波のせいで情緒ある景色が変わってしまったのが残念」と大塚氏。アウトドア義援隊の現地での活動は4次隊で一旦終了するが、今後は提携する自治体に災害援助金を贈るなど復興支援へと移行する。
同社は、公式ホームページ内で「暮らしの中の防災」をテーマに、防災に関する知識と災害時に役立つアイテムを紹介している。水害時にライフジャケットになるクッションやフリーズドライ製法の非常食などは、地震発生時から注文が増えているという。
大塚氏は「キャンプや山登りなどで日常生活とは異なる環境に慣れておけば、災害が起きたときに対応できる。低い山でもいいし、野外活動を体験しておくだけで全然違う」と、普段からアウトドアを楽しむことの大切さを呼びかけている。