坂東龍汰、「100円の重み」を理解した下積み時代。夢をつかんだ今抱く俳優としてのポリシーは?
三つの島を舞台に“ある事件”と“れいこ”を探す心の旅。三島有紀子監督が自身の身に起きた事件をモチーフに、「性暴力と心の傷」という難しいテーマに挑んだ映画『一月の声に歓びを刻め』(2月9日公開)。3つのエピソードからなる作品で、そのうちのひとつに俳優の坂東龍汰が出演する。 【撮り下ろし】坂東龍汰の写真はコチラ 今回は坂東龍汰に、共演の前田敦子との二人芝居の思い出から、俳優を志した当初の下積みバイト時代のエピソードまでじっくりと語ってもらった。
『一月の声に歓びを刻め』坂東龍汰出演パートあらすじ
大阪・堂島。れいこはほんの数日前まで電話で話していた元恋人の葬儀に駆け付けるため、故郷を訪れた。茫然自失のまま歩いていると、橋から飛ぶび降り自殺しようとする女性と出くわす。そのとき、「トト・モレッティ」というレンタル彼氏をしている男がれいこに声をかけた。過去のトラウマから誰にも触れることができなかったれいこは、そんな自分を変えるため、その男と⼀晩過ごすことを決意するのだが……。 (映画『一月の声に歓びを刻め』公式サイトより)
即興性の高い演技を念頭に―喜劇俳優のような盛りだくさんの役
──坂東さんが演じたトト・モレッティとは、どんなキャラクターでしたか? トト・モレッティは情報量の多い男です。漫画家という夢を追っており、その人間観察のためにレンタル彼氏をやっている。イタリアにいた時期があり、イタリア語を話せてイタリアの娼婦のことも知っている。そして服装はサイレント映画の喜劇俳優のよう……情報てんこ盛りの役どころです。 ──何層もの設定があって演じるのが難しそうですね! まさにそうで、この複雑な背景を持つ人物をどのように表現すればいいのか撮影当日まで模索しました。でも撮影現場では柔軟にトトの心の動きを追うことができました。それは撮影のたびにトトの心情や感情について三島監督と話し合って作り上げることができたからです。トトには人間観察をしているという背景があるので「セリフを言おう」という意識は一度忘れて、前田敦子さん演じるれいこのセリフに耳を傾けて反応することを念頭に、生っぽいリアクションを追求しました。今回の演技に対するアプローチは普段の僕のやり方とは違って、即興性の高い演技だったと言えるかもしれません。