坂東龍汰、「100円の重み」を理解した下積み時代。夢をつかんだ今抱く俳優としてのポリシーは?
前田敦子との二人芝居は、逃げ場のない濃密な2日間
──しかも、前田敦子さんとの濃密な二人芝居! そうですね。ほぼすべてのシーンに映っているわけですから……逃げ場がないんです! 物語は2日間という短い時間の中で色々なことが起こっていく構成を取っていますが、撮影自体も物語の時間軸に合わせて2日間で行われました。撮影前にワークショップと呼べるような時間をかけたリハーサルを行いましたが、現実と物語が地続きにあるようなスタイルの撮影でした。 ──前田さんとは二度目の共演ですね。共演した印象は? 前田さんを一言で表すならば、お姉ちゃん! 構えがなくて飄々とされていて会話も弾みやすい。こちらの話をなんでも聞いてくれる雰囲気があるので、人生相談をしたり、ホテルでのシーン前には女性がキュンキュンする仕草について話したりしていました。僕自身緊張して恥ずかしがっていたら「照れるな! 撮影だぞ!」みたいに喝を入れてくださました(笑)。前田さんは感情がダイレクトに伝わるような声色をされている方。たとえセリフであっても自然とこちらがリアクションしてしまう力を感じました。
暴走しない程度に冒険する
──キャラクターを演じる上で坂東さんはどんなことを大切にしていますか? 演技をする上で僕が大切にしているのは「ありきたりをしない」ということです。「Don't be cliché」。これは西島秀俊さん主演の映画『Cut』(2011)などで知られるアミール・ナデリ監督からワークショップの際に言われた言葉です。僕は小学校から高校までシュタイナー教育という独特な教育を受けてきましたが、ナデリ監督から「Don't be cliché」と指摘されたときに、何か自分の中で腑に落ちるものがありました。シュタイナー教育では電子機器の使用は認められておらず、テレビや映画、漫画は禁止。全校生徒が少ない一貫校という超狭いコミュニティーの中で15年間生きてきました。でもそれはある意味でありきたりの人生ではないわけです。だったらその15年間で育まれた感性にストッパーをかけなければ、人とは違った空気感をまとえるのではないかと。そんな気づきを得てからは、無理に人に合わせて変なことをするのではなく、自分のイマジネーションに従っていくべきという考え方に変わりました。それこそが「Don't be cliché」の道に繋がるのではないかと思うからです。 ──その空気感は本作でも発揮されていますね。『春に散る』で演じた若手ボクサー・大塚俊でもビンビン放っていました! よく観ていただいて嬉しいです。『春に散る』では「まだやれる!」という言葉が自然とアドリブで出た瞬間がありました。僕は自分の感性から出たことは勝手にやってしまう派(笑)。その良し悪しをジャッジして調理してくれるのは監督なので、調理される材料として感じたことを表現として吐き出すのを自制する選択肢は不要だと考えています。出し切った結果OKだと判断してもらえたら嬉しいし、NGだと言われたら反省して次に活かす。やらないで後悔するより200%の力を出し切って後悔した方がまだいい。暴走しない程度に冒険する。それが僕の俳優としてのポリシーです。