「テスト」の知られざる効用とは?「テストがある」と予期するだけでも実は効果が…<ちょっとした努力>で記憶は定着する
「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「メタ」とは「高次の」という意味で、つまり認知(記憶、学習、思考など)を、高い視点からさらに認知することを指します。三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授によれば「メタ認知は自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる<もうひとりの自分>。活用次第で頭の使い方がグッとよくなる」だそう。先生の著書『メタ認知』をもとにした本連載で、あなたの脳のパフォーマンスを最大限に発揮させる方法を伝授します! 【書影】三宮先生が「頭」をよりよくする方法を伝授!『メタ認知』 * * * * * * * ◆「テスト」はうまく使えば役立つ 覚えたはずのことが、必要な時にスムーズに出てこない……といった経験はないでしょうか。実は、覚えているつもりだったのに、いざとなると思い出せないということは、案外多いものです。 これは、自分があることを正確に覚えているかどうかについてのメタ認知的モニタリングが、十分に働いていないことによって起こります。 自分がきちんと覚えられたのかどうかを明確にするもの、それはテストです。 「今からテストをします」と言われて喜ぶ人はあまりいないと思いますが、実はテストは、主体性を持ってうまく使えば、非常に役立つものなのです。
◆「テスト効果」 まず、テストによって記憶を確かめることができます。記憶があやふやだと、テストで答えることができません。これは、誰もが知っていることですね。 ところが、テストの効用は、これだけではないのです。実は、記憶の定着に大きな効果を持っているのです。 あることを正確に覚えているかどうかを調べる記憶テストは、私たちがすでに長期記憶に貯蔵したものを思い出す(想起する)練習になるため、効果があるのです。 思い出そうとすること、すなわち想起努力によって記憶がより強固なものになるという効果を「テスト効果」と呼びます。
◆思い出そうとする想起努力が記憶の定着に効果を持つ 大学生を対象とした実験で、ヘンリー・レディガーたちは、テキストを読んだ直後にテストを受けたグループと、テストを受けずにテキストをもう一度読んだグループの二日後のテスト成績を比べました。 すると、テストを受けたグループの成績が、テストを受けずにテキストをもう一度読んだグループよりも優れていたのです。一週間後のテスト成績を調べると、さらに両グループの成績の差が開いていました*1。 レディガーたちの実験結果は、覚えた内容を思い出そうとすることが、記憶にとって非常に効果的であるということを示しています。 私たちはテストを受けることによって、覚えた内容を真剣に緊張感を持って思い出そうとするわけですが、この時の、思い出そうとする想起努力が、ただ漫然とテキストを読み直すよりも記憶の定着に効果を持つということです。