斎藤工“進平ロス” から立ち直れない…。『海に眠るダイヤモンド』で発揮した“放っておけない魅力”とは? 独自の色気を解説
主演の神木隆之介のほか、斎藤工、土屋太鳳など、主役級キャストが脇を固めている日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』。中でも、端島で炭鉱員として働く荒木進平を演じる斎藤工の深みのある演技に賞賛が集まっている。今回は、本作における斎藤工の芝居の魅力を解説する。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】斎藤工が醸し出す“深みのある色気”とは? ドラマ『海に眠るダイヤモンド』劇中カット一覧
悲しみを背負った戦争と労働の過酷な現実
『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)がまもなく最終話を迎える。 1950年代の長崎県端島(軍艦島)で暮らす人々と現代の物語を行き来しながら、6,7話あたりから繋がりが見えてくるようになった。出演俳優の豪華すぎる顔ぶれは言わずもがな、壮大な作品に仕上がっていることに舌を巻くばかりだ。 本稿では、端島で炭鉱員として働く荒木進平(齋藤工)について掘り下げたい。 当時の端島は、炭鉱によって支えられていた。日本で一番人口密度が高く、そのうえテレビの所有率も高かったというから、栄華を極めたといって差し支えないだろう。 人々の生活を潤わせる炭鉱だが、労働は過酷だ。8時間勤務の3交代制が採用されており、炭鉱員たちは海深くにつくられた温度も湿度も高い環境で石炭を掘り続ける。 進平は戦地から戻ると端島で炭鉱員として働く。寡黙な印象を受けるが、仲間想いなところがあり、仕事に対しても熱い。 しかし、戦地では家族にも話したくないような体験をし、戦後に一緒になった妻・栄子(佐藤めぐみ)を台風で亡くしている。戦時中は大事な人を失う経験をしている人が少なくなかったとはいえ、辛いことの多い人生を歩んできたといえるだろう。
斎藤工が体現する荒木進平の魅力
進平の最たる魅力は、身体中からにじみ出る陰の空気だ。人を避けているわけではないのに、近寄りがたい。進平の哀しみと斎藤工のもつ色気が、まるで化学反応でも起こしたみたいに“放っておけなさ”を醸成する。 そんな進平と惹かれ合うことになるのは、福岡からヤクザものに追われて逃げてきたリナ(池田エライザ)。事情は異なるが、リナも人には言えない過去を抱えている。 印象的だったのは、精霊流しで海に流した船からお供え物を取り、リナに渡したシーン。進平はリナに、「端島の掟。お供え食べたら、来年返さないけん」と言うのだった。 追手から逃げなくちゃいけないと考えていたリナにとって、未来のことなど頭になかったはず。それを約束させるようなことをさらりと言い、海水を滴らせながら笑顔を見せる進平、もとい斎藤工はずるい。 しかし、結局は端島にリナの追手がやってきてしまう。そこで、進平はリナを助けるために追手と揉み合いになるが、最終的には拳銃で相手を海に沈めた。戦争を経験したからということもあるのだろうが、誠実であることよりも生き抜かねばならないという意志が宿った銃口には迷いがなかった。