斎藤工“進平ロス” から立ち直れない…。『海に眠るダイヤモンド』で発揮した“放っておけない魅力”とは? 独自の色気を解説
“進平ロス”を引き起こした斎藤工の演技力
それぞれに愛した人を亡くした過去を持つ2人。罪を共有したことによりさらに加速していく気持ちは止められない。暗い海を前にしたキスは、信じられないくらいにロマンチックだったが、一方でこの幸せは長くは続かないのだろうことが予感され、どうしようもなく寂しくなった。 その後、進平とリナの間には子ども(誠)が生まれるが、籍は入れず、ゆえに出生届も出せなかった。端島という閉鎖空間で生きていくならば、当面はそれでも問題ないと考えてのことだった。 だが、その問題を解決せぬまま、進平は坑内火災で命を落とす。一度は栄子の幻に誘われそうになりながらも、リナと誠の姿を思いなんとか生きようとした。 リナと出会わなければ、誠がいなければ、栄子の幻を見た時点で、進平は抗うことなく命を手放していたかもしれない。さまざまな修羅を潜り抜けてきた男が、生への希望に手を伸ばすさまは圧巻だった。
斎藤工が醸し出す深みのある色気
本作で、斎藤工は出世作となった『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系、2014)からさらに深化した色気を見せた。それはきっと齊藤が年齢を重ねた渋みと、これまで演じてきた役によって培われてきた深みによるものだろう。 色気と、渋みと、深みと。これらによってつくり出された斎藤工の進平は、多くを語らずとも、人生へのある種の諦念を持った状態から生にこだわるまでのグラデーションを雄弁に表現していた。だからこそ、“ロス”が叫ばれるほどに、彼が魅力的なキャラクターに昇華されたのだろう。 リナのもとに誠という新たな命を残しこそしたものの、結局はまた、リナに愛する人に先立たれる哀しみを味わわせてしまった進平。しかし、リナは誠を連れ、鉄平とともに端島を出て行こうとしている。死してなお、進平の影を感じながら、『海に眠るダイヤモンド』の最終話を見守りたい。 【著者プロフィール:あまのさき】 アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。