富士フイルムの意外な“稼ぎ頭”と成長事業の中身、伸び盛りの半導体材料は「マルチ戦略」で勝負
富士フイルムの提供する半導体材料の中では、約8割の世界シェアを誇るイメージセンサー用カラーフィルター材料が有名だ。現在、日本、台湾で製造をしている。2024年末には韓国でも製造設備が稼働予定だ。 しかし、同社の提供する半導体材料はそれだけではない。半導体の基板材料であるウェハーに回路を描く際に使われるフォトレジスト、研磨剤のCMPスラリー、保護膜の形成などに使われるポリイミドなどラインナップが幅広い。
■M&Aで半導体材料を拡大 これまで富士フイルムは、買収を駆使して半導体材料事業を拡大してきた。半導体材料を手がける発端となったのは、1983年にアメリカのフィリップ・エー・ハントケミカル社と合弁設立で参入したフォトレジストの輸入販売だ。翌1984年から、国内企業向けに国産フォトレジストの製造を開始した。 2004年にはアーチケミカルズ社の電子材料事業を買収し、同事業に本格参入した。 続いて2010年には、CMPスラリーの専業メーカーを、2015年にはシリコンウェハーの洗浄などに使う高純度溶剤のメーカーを買収。2017年の和光純薬買収は、研磨後に使うポストCMPクリーナーなど半導体材料と、試薬などヘルスケア領域の二兎追う戦略だった。
長年、写真フィルムで培ってきた品質管理など化学の技術と資金とを生かし、買収企業の製品の改良と製造能力の拡大を進めてきた。2023年10月には、アメリカの半導体材料メーカーから半導体の製造工程で洗浄などに使われるプロセスケミカルの事業を買収。これにより複数の欧米拠点に加えて、東南アジアにも富士フイルムとしては初となる半導体材料の製造拠点を手に入れた。 分業と専門特化が進んでいる半導体業界のなかでも、材料分野はとくに「餅は餅屋」の傾向が強い。たとえば富士フイルムも製造しているフォトレジストでは、JSRと東京応化工業のシェアが高い。しかし富士フイルムは、幅広い製品ラインナップを持つことに意味があるという。