「当局にグリップされている」元警視庁担当記者が明かす取材の舞台裏 “前打ち“報道で解禁時間がそろう背景とは
●「警視庁の記者はコントロールされている」
警視庁には、汚職事件などを担当する課や特殊詐欺の捜査に当たる課などさまざまな部署が存在するが、当局から報道機関への圧力は捜査1課に限った話ではないとみられる。 記者たちの話を聞いて気になったのが、大川原化工機の冤罪事件をめぐる報道だ。 同社が起こした国家賠償請求訴訟で、1審の東京地裁から賠償を命じられた国と東京都が控訴することを決めた際、報道機関3社が今年1月10日午後1時ぴったりに、「関係者への取材でわかった」などと独自取材の結果として「控訴へ」という記事を配信した。 この冤罪事件では警視庁公安部の捜査手法に強い疑惑の目が向けられており、賠償を命じられた国と東京都が控訴すること自体に社会から批判が集まる可能性があった。 そのような事件でも3社で報道のタイミングが一致したのを見ると、当局に都合の悪いことを報じる際にも警視庁の圧力に報道側が屈しているのではないかという疑念が生じる。 実際、事件取材の経験が長いある記者は「警視庁の記者はかなりコントロールされている。今までみてきた記者クラブで一番やばい」と危機感を隠さない。 冒頭の記者は「当局に対して勝負すべきところで勝負できているのか。大川原化工機の冤罪事件の報道を見れば明らか。その見極めの仕方が世間とずれてしまっている。警視庁担当の記者はしんどいと思うが、視野狭窄になってしまっている」と明かす。 そのうえで、「今の取材、報道のあり方に問題意識を持っている記者も多いと思う。ただ、組織、チームで取材しているので、記者個人ではこの現状をなかなか打開できない」と語った。