被災で生まれたつながり 日常付き合いで「共助」を 連載「豪雨災害から10年、あの日に得た教訓」②/兵庫・丹波市
旧前山保育園舎を活用した地域交流拠点「オアシスいつせ」(同町上竹田)。同町前山地区の住民約20人でつくる「オアシスいつせサポーター倶楽部」が運営を担い、カフェを開いたり、百歳体操を行ったりしている。 地域の集いの場に、と施設の整備が進む中、豪雨に見舞われた。道路にあふれた水は滝のように流れ、家の庭は「海」になった。同倶楽部代表の北村久美子さんは「つらい目に遭ったけれど、奥の地域は被害がもっとひどかった。『しんどい』とは言えなかった」と吐露する。 ほどなくして、同施設の隣のコミュニティーセンターが、水や生活用品といった物資の配給拠点になった。「大変やったね」「元気しとったか」―。自然と住民の会話が生まれ、しゃべることで心が落ちついていた。その様子を見た荻野まつこさん(79)の呼びかけで、交流施設の運営に協力する同倶楽部が立ち上がった。 荻野さんはスタッフとして施設に足を運ぶ中で「『あ、こんな人がおってんや』という新しい出会いもあった。バレーボール大会などの地域の催しがなくなる中で、交流の輪が広がった」と笑顔を浮かべる。 北村さんは「しんどい思いをしたからこそ、助け合いの大事さを肌感覚で知っている人ばかり。災害がつながりをもたらす場になったのかもしれない」と話す。 同町などを襲った豪雨災害の復旧時には、全国から駆けつけたボランティア延べ1万8000人以上が活動した。 今年、同町内で開かれるイベントでは、1月に発生した能登半島地震の被災者を支援する募金活動が行われている。「被災者の多い市島から息の長い支援を」と、同町自治振興会長会で決めた。 坂谷高義会長(78)は、「豪雨の実体験がある分、人ごととは思えない。あの時も、女子野球の選手といったボランティアの人たちがあちこちから来てくれて、本当に感謝感動だった。その恩返し。少しでも人助けができれば」と話す。 この他にも同町では復興に取り組むグループが立ち上がり、豪雨を機に多くの人とのつながりをつくり、互いを助け合える「共助」の関係性を築いた。この絆こそが、被災で得た何よりの教訓と言えるのかもしれない。