イタリア、代理出産のための海外渡航を禁止する法案を可決
イタリア議会は16日、代理出産を通じて子どもを持つために海外へ渡航することを禁止する法案を可決した。 同国ではすでに2004年に国内での代理出産は禁止されていたが、今回可決された法案はその適用範囲を拡大し、自国民が海外で代理出産を利用することも禁じるもの。違反した場合には懲役刑や罰金が科される。同法案は昨年下院を通過し、今回上院でも84対58の賛成多数で成立した。 英ロイター通信によると、この法律はイタリアのジョルジャ・メローニ首相が長年温めてきた構想で、同首相はかねてより、在任中に「伝統的な家族」の価値観を増強したいと述べていた。仏AFP通信が伝えたところによると、メローニ首相は米交流サイト(SNS)のX(旧ツイッター)に、「子宮の賃貸を普遍的な犯罪とする法案がついに法制化された」と投稿。新法は「女性の体と子どもの商品化に反対する常識的な規範だ」と歓迎した。 本法を巡っては、イタリアの現保守政権が同性カップルを標的にする手段だと批判する声もある一方で、母性の神聖さを守るものだと擁護する向きもある。だが、本法律の支持者でさえ、男女のカップルが乳児を連れてイタリアに帰国しても、それが代理出産によるものかどうかと質問されることは恐らくないため、この法律の施行は難しいだろうと認めている。つまり、この新法で影響を受けるのは同性愛者のカップルだというのが、批判者の主張だ。LGBTQなど性的少数者の権利擁護団体「レインボーファミリーズ」のアレッシア・クロチーニ代表は米紙ワシントン・ポストの取材に対し、「代理出産を隠せないのは同性愛者のカップルだ」と指摘した上で、「これは同性愛者の父親を狙ったものだ」と訴えた。米紙ニューヨーク・タイムズは、本法律があまりに広範囲に及ぶため、今後予想される法的な異議申し立てを退けられるかどうかは現時点では不明だとしている。 メローニ首相率いる極右政党「イタリアの同胞」は、カトリック教会が代理出産に反対する姿勢に賛同してきた。ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は今年初め、代理出産は「女性と子どもの尊厳に対する重大な侵害」で「嘆かわしい」と批判し、世界的に禁止するよう呼び掛けた。メローニ首相も4月、代理出産は「非人間的な行為」であり、「これを普遍的な犯罪とする」法案を支持すると表明した。米AP通信によると、イタリアの中道派の下院議員の1人は代理出産が「子どもの売買」であるとして、「身体の商業化の最も極端な形だ」と批判した。 イタリアは近年、少子化に苦しんでいる。ロイター通信によると、同国の昨年の出生数は37万9000人で、15年連続の減少を記録。前年との比較では3.6%減、2008年比では35%近く減少した。 代理出産はイタリア以外の複数の欧州諸国や米国の一部の州でも禁止されている。
Molly Bohannon