明治、牛乳成分でやせる? 目安は○mL 高カカオチョコにも健康効果
乳酸菌がオートファジーを誘発し、腸管バリアー機能を高める
「オートファジー」の解明は、2016年のノーベル生理学・医学賞を受けたほどの大きな功績だった。オートファジーとは、細胞内の不要な物質や侵入した細菌などを分解し、リサイクルして栄養素を生み出すといった一連の現象で、細胞内を正常な状態に保つシステムのこと。細胞の老化を抑える働きもあるのではと考えられている。 明治は18年、東京医科歯科大学(現東京科学大学)・難治疾患研究所教授の清水重臣氏とタッグを組み、オートファジーを誘発する物質の探索に着手。目をつけたのは、同社が保有する乳酸菌「OLL2712株」だ。 過去の研究により、同株が腸内の免疫細胞に作用し、抗炎症効果を誘導することは明らかになっていた。さらなる可能性を追求したところ、「腸管上皮細胞において、オートファジーを誘導することも突き止めた」(明治・研究本部・乳酸菌研究所の渡邊祐美子氏、所属は当時)。さらに、オートファジーの活性化によって、細菌や毒素の侵入をブロックする腸管バリアーの機能を高めることも確認した。 オートファジーと腸管バリアー機能が共に高まれば、細胞の健全化と免疫力強化の2つの効果を得られる。現在、同株を使った商品には内臓脂肪を減らす機能性表示食品(ヨーグルトなど)があるが、抗老化に効果のある新商品も期待できそうだ。 ●少量のミルクプロテインと簡単な運動でOKな健康法 明治はミルクプロテインの研究も熱心に行っている。帯広畜産大学准教授の村田浩一郎氏らとの共同研究で、牛乳やチーズなどの乳製品に多く含まれる「ミルクプロテイン(乳たんぱく質)」の継続摂取と、簡単な運動を組み合わせることで、60歳以上の男女の筋肉量が増加することを試験で確認した。 試験では、吸収性を高めたミルクプロテインを使用。被験者には6カ月間、毎日スクワットや腕立て伏せなど村田氏が考案した低~中程度の運動強度のトレーニングをした後、1時間以内に10gのミルクプロテインを含む飲料を飲んでもらった。 その結果、筋肉量は有意に増加し、体脂肪量は減少した。「少量のミルクプロテインの摂取と10分程度の簡単な運動で効果を得られ、高齢者でも無理なく継続できる」(明治・研究本部の中山恭佑氏) ミルクプロテインと適度な運動との組み合わせで、筋肉量を増やして体脂肪率を下げられることが分かった。試験と同量のミルクプロテインを取る場合、市販の牛乳なら300mL程度が目安。高齢者でも継続可能な負担の少ない健康法は、健康寿命を延ばす現実的な手段となりそうだ。
宮岸 洋明