令和の「熟年離婚の現状」とスマートな「離婚の報告」の方法とは?マナー講師が解説
喜びの報告と違ってなかなか言いだしにくい離婚の報告。令和の時代の熟年離婚の現状と、今時の流儀について、マナー講師の井垣利英さんに聞きました。
令和の離婚の現状と、報告の基本的なマナーとは?
お話を伺った人=井垣利英さん(シェリロゼ代表) ビジネスや冠婚葬祭のシーンでのよりよいコミュニケーション術を教える井垣利英さん。曰く「離婚のような伝えにくい内容を報告するときこそ、プラス思考で乗り切りたい場面です。報告をする人もされる人も、それぞれにマナーの心得が大切ではないでしょうか。伝える側は、相手が重たく感じないように、報告された人もポジティブな言葉でクロージングするように心掛けましょう。双方、笑顔で話を終わらせる気遣いが大切です」 離婚に関して、厚生労働省の人口動態速報では、件数としては2002年に28万9836組のピークを迎たあとは2023年までに18万組台まで減少。これは少子化による人口減も影響しているといえそうですが、婚姻数と離婚数を比べると、日本全国で一日に結婚するカップルが1436組あるのに対して、離婚するカップルが528組に上ります(2022年厚生労働省統計)。つまり、結婚する人のおよそ3分の1の数の離婚が、毎日成立していることになります。 最近の傾向として、同居期間が20年以上の夫婦の離婚件数が増加していることが特徴です。熟年離婚が増えている原因のひとつには、人口の高齢化が考えられます。高齢化によって男女とも生きられる時間が増えたことで離婚できる期間自体も長くなったこと、また、2008年に始まった年金分割の制度も、熟年離婚を増やすきっかけになったといわれています。 「これまでは、老後の生活費が心配などという不安から、なかなか離婚に踏み切れなかった人でも、経済的な面で我慢せず、自分の気持ちに正直に新しい人生の選択ができるようになりました。昔と違い、離婚したからといって後ろ指をさされるような空気はありません。ですが、離婚は人生の節目のひとつで、一大事であることに変わりなく、大切な人には、短い時間でも直接会って報告をしておくとよいでしょう。スマートな報告をすることでお付き合いが良好に続きます」 報告する際にいちばん大切なのは、タイミングだという井垣さん。離婚の協議期間中には伝える必要はなく、正式に離婚が決まったときに。タイミングを逃すと言いだしにくくなってしまうので、自分のためにも早めに報告しましょう。 「報告すべき優先順位は、まず両親。そして離婚の相談にのってくれていた人がいるならその相手、さらに日常生活で毎日のように触れ合っている会社の上司や同僚、友人と続きます。遠方で普段あまり交流のない旧友などには、折を見ての報告でよいでしょう。伝えにくいかもしれませんが、上司への報告は『プライベートなことなのでお伝えするのは申し訳ないのですが』などとクッション言葉を使って、さりげなく1カ月以内に切り出したいもの。また、上司の方は他言無用、守秘義務を守るのはもちろんのこと、『報告してもらってよかった。ありがとう』と笑顔で締めくくりましょう。笑顔とありがとうは、立場が上の人ほど大切にしたいコミュニケーションの宝です」 いがきとしえ●マナー講師。フリーアナウンサーを経て2002年に人材教育会社「シェリロゼ」を起業。おもに企業の経営者や社員を対象に、年間100本以上の社員研修や講演会を行う。延べ3万人を指導。 取材協力=井垣利英(シェリロゼ) 編集=吉岡博恵、八木あきほ 『婦人画報』2024年7月号別冊