厚生年金「年収106万円」要件撤廃へ 「週20時間労働」は残る
厚生労働省は、パートら短時間労働者が厚生年金に加入する賃金要件(年収換算106万円以上)を撤廃する方向で調整に入った。いわゆる「106万円の壁」は撤廃される見込みだが、「週20時間以上の労働時間」の加入要件は残る。最低賃金の引き上げに伴い、賃金要件を上回る地域が増えており実態に合わせた形だ。短時間労働者でも厚生年金に加入できる人を増やし、老後の年金給付を手厚くしたい考えだ。 厚生年金は①週20時間以上の労働時間②月額賃金8万8000円以上③企業規模51人以上④学生でない――といった要件を満たせば、正社員ではないパートら短時間労働者も加入対象となる。厚労省は段階的に要件を引き下げて適用拡大し、企業規模要件も撤廃する方向だ。賃金要件のほか企業規模要件の撤廃なども含めると新たな対象者は約200万人を見込む。 最低賃金の上昇に伴い、週20時間以上の労働時間があれば年収106万円を上回り、賃金要件は自動的に満たしている地域が増えている。2024年度の最低賃金で週20時間、年52週間勤務した場合の年収を計算すると、最低賃金が時給1163円で最も高い東京は約120万円に上る。石破茂首相は20年代に最低賃金を1500円とする目標を打ち出しており、今後も上昇が見込まれる。労働時間数による要件は存続するため、就業調整する人は一定程度残るとみられる。厚労省は来年の通常国会での関連法案提出に向けて撤廃の時期などを詰める。【宇多川はるか】