日本にすり寄る中国経済の深刻事情 問われる石破首相の外交手腕 習主席と初の首脳会談、日本産水産物の輸入再開履行を確認
石破茂首相は15日午後(日本時間16日午前)、訪問先のペルーの首都リマで、中国の習近平国家主席と初めて会談し、「戦略的互恵関係」の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係を構築するとの方向性を確認した。東シナ海情勢や中国の軍事活動活発化を「極めて憂慮している」と伝え、日本産水産物の輸入を再開するとの合意を着実に履行することも確認したという。 【写真】マンション・バブル崩壊の中国。工事が止まったままの施工現場も多い 石破首相は会談後、「大局的な観点から非常にかみ合った意見交換ができた」と述べた。今後も会談を重ねていく方針で一致したという。首相は就任直後の10月に李強首相とも会談しており、中国重視の姿勢が目立つ。 新華社電によると、習主席は、日中は互いに脅威ではなく協力のパートナーだという共通認識を示した。世界や地域の情勢が混乱の中にあると指摘した上で、日中関係は「改善と発展という重要な段階にある」と述べたという。 中国としては経済の低迷が続くなか、ドナルド・トランプ次期米大統領の返り咲きで米国との対立激化も予想されることから、日本にすり寄りたい思惑もうかがえる。 中国経済に詳しい東京財団政策研究所の柯隆(か・りゅう)主席研究員は「中国は内需が低迷し、外需に依存するしかないが、トランプ氏の再登板で米中関係はさらに悪化する。技術移転や直接投資をしてくれる日本が頼みだが、外需誘導に必要な『反スパイ法』の見直しや、裁判や情報の透明性を担保する制度改革など習指導部が進めた施策の転換は難しい。自己否定できない独裁体制下では経済回復の見込みはない」と断じる。 日本は今後、中国にどう対応していくべきか。 柯隆氏は「『ほめ殺し』と『脅し』の両面を駆使すべきだ。水産物の輸入再開では、相手のメンツをつぶさず、日中の経済フォーラムを開くなどしてディール(取引)の材料とするのも一手だろう。一方、『日本企業を引き揚げる』と脅しをチラつかせる必要もある。トランプ流の戦術を学んでもいいのではないか」と話す。引き続き首相の外交手腕が問われそうだ。