「国立女性教育会館の存続を!」 埼玉・嵐山町で100人会議
移転という名の廃止?
国側は移転の主な理由を「ヌエックの機能強化のため」としている。しかし、存続する会の伊藤正子さん(川越市議)は「国との懇談で、移転してどのような機能をどう強化するのか尋ねてみたが、明確な返答はない。実のところ縮小あるいは廃止なのでは」と不信感をあらわにする。 100人会議には国会議員や専門家も参加。参議院議員の福島みずほさんは「移転すると現在のような環境はなくなってしまう。これからヌエックを、いろんな企画で使い倒して元気にしましょう」と呼びかけた。女性政策研究家の三井マリ子さんは「目と目をあわせ、手を握り、肩を抱き合う、そんな空間は得難い。市民を巻き込んで“移転”をひっくり返すたたかいをスタートしませんか」と、今後の活動展開を提案した。 東洋大学参与の関賢二さんは「ナショナルセンターの移転は、省庁が判断するレベルの問題ではない。日本で男女共同参画をどう進めるかというのは国家として考える課題であり、国際社会での日本の評価にもかかわる」と、政策決定の側面から問題を指摘する。 国連の第1回世界女性会議がメキシコシティで開催されたのが1975年、77年のヌエック設立はこの世界の潮流を受けてのことだ。2024年10月、日本政府はジェンダー平等政策の実施状況について、国連女性差別撤廃委員会の審議を受けることになっている。このタイミングで、多くの反対の声があるなかでヌエック移転を進めることの意味を、国はどう認識しているのだろうか。 追記:7月30日、政府は嵐山町でヌエックを存続すると発表した。現在の運営主体である「独立行政法人国立女性教育会館」を改組し、女性活躍の支援強化の司令塔とするという趣旨だ。会館の移転は回避されたが、研修棟・宿泊棟は老朽化のため撤去するという。 存続する会の渋谷さんは、「女性活躍という経済的視点ではなく、差別を撤廃していく方向の拠点として位置づけてほしい」という。存続する会は、今後もヌエックに集いながら運動を継続していく。
古川晶子・ライター