クセ強キャラも難なくこなす…藤原竜也が実写化作品で見せた「七変化演技」
■ギャップが鮮やかだった『カイジ』伊藤カイジ
次は福本伸行さんの漫画を原作とする映画『カイジ 人生逆転ゲーム』のカイジを見ていこう。カイジは普段の生活では自堕落で頼りないのに、ギャンブルになるとまるで別人のようになる。 カイジが自身を騙そうとしてくる相手の心理を逆手に取って逆転する姿は爽快感しかない。先ほど紹介した夜神月と同じようにギャップを感じるキャラだ。 カイジに登場するギャンブルはほとんどが命がけで、負けたらすべてが終わり……。そういう意味でひりつくような緊張感がある。超高層ビルでの鉄骨渡り「ブレイブ・メン・ロード」はその最高峰で、藤原さんは次々と人が落ちていく中でのカイジをリアルに演じていた。 時に情けない姿を見せつつ、やる時はやる!といった覚悟も感じられ、終始手に汗握りながら見守ってしまう。だからこそ無事にゴールした時には、見ている側もカイジ同様に喜んでしまった。 他にも『カイジ2 人生奪回ゲーム』でのパチンコ勝負。こちらは勝てば10億、負ければ一生地下から出られないという大勝負だ。 ここでカイジは一度負けかけてから起死回生の逆転を果たすので、かなり盛り上がる。借金を完済し、地上に出られた時に仲間と一緒に合流して盛り上がるシーンも最高だ。 このように藤原さんは絶望と歓喜の演じ分けが見事で、見ている人の心をアツくさせる。個人的に好きなのは、カイジのクズな性格の演技。あまりにも原作に近いので思わずクスリとさせられてしまった。地下帝国にて、ビールに感動してこぼれた「キンキンに冷えてやがるっ………!」というセリフは、多くの人が真似したにちがいない。
■カリスマ性にゾクリ…『るろうに剣心』志々雄真実
最後は和月伸宏さんによる『るろうに剣心ー明治剣客浪漫譚ー』の映画版の志々雄真実だ。志々雄といえば剣心の宿敵で圧倒的な強さを持つ。全身火傷の後遺症で15分以内しか動くことができないという制約があるのだが、活動制限が無ければひょっとしたら剣心に勝っていたかもしれないキャラである。 志々雄は全身を包帯で覆っているので、顔がほとんど見えない。そのためパッと見ではどの俳優が演技をしているのか分からないほどだ。 しかし、藤原さんは声や仕草だけで十分志々雄らしさを表現して存在感を出している。弱肉強食を掲げる志々雄の荒々しさがセリフの発声からも感じられ、カリスマ的悪役の迫力が存分に伝わってきた。 何よりも凄いのが戦闘シーンで、素早い動きに加え、志々雄のオリジナルである炎を使った剣術は大迫力である。 特に圧巻だったのが、佐之助、斎藤、蒼紫、剣心を同時に相手にするシーンだ。息つく間もない展開で、藤原さんが剣心を演じる佐藤健さんたちを倒していく様は、敵ながら心を奪われてしまう……。 炎に焼かれながら高笑いする最期も、恐ろしさや不気味さだけでなく潔さも感じられて良かった。ほとんど顔が見えずともぐっと惹きつけられてしまったのは、藤原さんが顔だけでなく声や立ち居振る舞いからも「志々雄らしさ」を醸し出していたからこそだろう。 藤原さんは実写化作品にも出演することが多く、キャラの魅力を存分に引き出すような演技をしている。感情の使い分けや二枚目にも三枚目にもなれる演技の幅の広さ、そういったところから様々なキャラを演じることができるのではないだろうか。 今後、藤原さんが実写化作品でどんな活躍を見せてくれるかも楽しみだ。
大山元