萌えキャラは新時代のインフラ!? 「東北ずん子」の素顔を歩く
スタンプラリーの絵柄は毎回変えており、そのイラストも市内のイラストレーターが描いている。 山田さんと共にずん子スタンプラリーを運営する田中健一さんは、「東北の人なら誰でもフリーで使えてしまう以上、白石ならではのずん子が求められます」と強調する。「ですので、ただ単にずん子やきりたんなどの絵を描くことは極力せず、そのお店にしかないものを食べさせたり、持たせたり着させたりして他との差別化を図っています」 白石市内を巡ると、ずん子が描かれたラッピングバスや、のぼり旗、そして街灯まで様々なずん子がお出迎えしてくれる。東北ならぬ“白石ずん子”がそこにある。
補助金よりもクラファン
驚くべきことに、ずん子スタンプラリーも“本家”同様、運営資金がクラウドファンディングによってまかなわれている。その経緯について山田さんはこう説明する。 「最初は他のまちおこしイベント同様、市の補助金を利用して運営していました。しかしその場合、市という枠組を超えた活動はできないし、市の意向に従わないといけなくなります。そこで、6回目の前回から補助金をもらうのをやめ、クラウドファンディングによる資金調達を開始したのです」 例えば湯めぐりスタンプラリーに蔵王町の温泉施設も加えようとしたが、「白石市内の施設」という制約で断念した経緯がある。他にも営利になるような活動ができなかったり、スタンプラリーの期間を自由に設定できなかったりなどの欠点があった。 「補助金をもらっている時はお金の使い方をめぐって行政と対立することもありました。ところがお金をこちらで用意できるようになったことで、逆に行政と連携を密に取れるようになりました」と山田さんは明かす。
資金を自前で持っているからこそ、市にルールの変更を働きかけることもできる。山田さんたちは今春のスタンプラリーに合わせる形で白石市民バスの回数券「きゃっする券」のずん子バージョンを作成しようとした。そのためには市の規則を変える必要がある。差額分はこちらで持ちますよ、と市に規則変更をお願いしたところ、OK。山田さんたちの希望通り、ずん子バージョンの回数券が実現した。 ちなみに今春のずん子スタンプラリーには過去最高の約500人が参加した。この要因について、山田さんはこう話す。 「最も観光客が集まる4月中旬の桜まつりの時期に実施できたのが大きい。これまではこの時期に開催したくてもできませんでした。準備に年度を挟むため、市の補助金での運営では無理だったのです。4月に開催できたのもクラウドファンディングの賜物です」