萌えキャラは新時代のインフラ!? 「東北ずん子」の素顔を歩く
大変だった「戦国BASARA」
「小十郎の郷」のある白石市は、市ぐるみでずん子をまちおこしに使っている。イベントの一つが「東北ずん子スタンプラリー」で、今春に7回目を終えた。 なぜ、東北ずん子なのか。そこには、かつて白石市が「戦国BASARA」で味わった辛酸とも呼べる経験があった。 「戦国BASARA」は、カプコンが開発した戦国時代を舞台にしたアクションゲームで、2005年からこれまで10作品以上発売されている。TVアニメ化も3回され、「歴女ブーム」と呼ばれる、女性の歴史ファンによる活発な歴史探訪を生むきっかけとなった。BASARAには白石ゆかりの戦国武将「片倉小十郎」も登場し、小十郎が治めていた白石城も例にもれず、「歴女」が全国から訪れるようになっていた。 こうした「歴女」を受け入れるべく、白石市も2008年頃からBASARAとのタイアップ企画を行いはじめた。市の予算100万を投じて、市が運営する市民バス「きゃっするくん」に小十郎のラッピングを施したほか、小十郎のイラストをパッケージに使った白石うーめんや、ゆべし、ひとめぼれなどを作った。
しかし、版元との交渉は一筋縄ではいかなかった。市内で印刷業を営む白石青年会議所の山田吉訓さんは、当時の苦労をこう振り返る。 「版元がパッケージのデザインや色をチェックするため、このやり取りが大変でした。私は印刷業をしているので、直接やり取りをしていましたが、特に色が適切に出ていないことについてのやり取りが多かったのを覚えています」 さらに続けて、 「色のチェックのことを色校というのですが、酷いときにはこれが10回にのぼりました。当時TVアニメが放映中で、それに合わせて商品を企画したのですが、やり取りで10回も版元と行ったり来たりしていたのでは、アニメを見て白石に来て下さる人達に間に合いません。実際、商品が店頭に並んだ時にはアニメの放映は終わってしまっていました。コストばかりがかさんでしまって、これではたまりません」 店頭に並んだグッズの中には思うように売れず、今でも残っているものもある。 「ずん子はこうしたやり取りがいらないし、使用料もフリーなので、思ったことをすぐに実行に移せるのが素晴らしい。二次創作も自由ですから、例えば湯めぐりをテーマにしたスタンプラリーの時には、温泉に入っているずん子のスタンプ、というようなものだってつくることができるわけです」