萌えキャラは新時代のインフラ!? 「東北ずん子」の素顔を歩く
「七夕まつり」は東北三大祭りの一つで、毎年200万人以上が全国から訪れる。ずん子のグッズを扱う露店が設けられたのは、七夕会場のアーケードから少し東に離れた東二番町通りの歩道。特に宣伝はしなかったものの、歩道の露天に3日間で600人あまりが押し寄せた。Twitterを見て関東など遠方からもどっと人が訪れた。 反響を機に、「mag」では常時ずん子グッズを売ることにした。以後、「mag」はずん子の「聖地」になり、年間を通じて全国から多くの人が訪れている。なんと沖縄からの来客もあった。 「ずん子を使っていろいろなことができる、遊べるんだということをこれからも伝えていきたい」と堀越さんは話す。ずん子を多くの人に知ってもらいたいと思い、2015年の「七夕祭り」では、ずん子たち3姉妹の絵柄を使った七夕を出展した。つけた名前は「東北ずん子の萌え七夕」。インターネット上で資金を集めるクラウドファンディングを試みたところ、全国から134万円が集まった。このやり方も小田さんに習った。
鍵はクラウドファンディング
それにしても、キャラクター使用料をタダにして「SSS合同会社」は大丈夫なのか。 小田さんの発想は「ずん子はインフラだ」という彼の言葉に象徴されている。誰もが共有できるコンテンツを先に無償で敷く、という意味だ。インフラが浸透したあと、東北以外の企業からお金を取っていく。具体的には新しい公式イラストを受注したり、キャラクタービジネスに関するコンサル料を取ったり。まずインフラを整備、というやり方は携帯電話の「新規一括0円」に似ているかもしれない。 インフラ優先のビジネスができるのには理由がある。クラウドファンディングを用いることで、開発資金の一部をファンに担ってもらっているのだ。 「実際に東北ずん子のボイスロイド、ボーカロイドはクラウドファンディングによって作られました」と小田さんが説明する。「ファンのユーザーさんはお金を出して企画自体を応援することに慣れています」 「ボイスロイド」や「ボーカロイド」は、声優の声を収録した素材を使って人工的に朗読させたり歌わせたりできるソフト。開発資金をファンに出してもらうことにより、ずん子づくりの一体感を持ってもらうことができる。もちろん世に出た「ボイスロイド」や「ボーカロイド」の売り上げは、SSSの懐に入る。 最近の例では、今年4月22日から5月17日にかけて「東北きりたん」の「ボイスロイド」開発にかかる資金がクラウドファンディングで集められた。開始1週間で目標額の450万円に達するという盛況ぶりで、最終的な到達額は698万3080円にのぼった。