エヴェネプールがスタート前のチェーン脱落も史上初の五輪TT&世界選手権TTの同一年ダブル制覇の快挙【Cycle*2024 UCI世界選手権大会 男子エリート個人タイムトライアル:レビュー】
ただ己の研ぎ澄まされた肉体と感覚だけを頼りに、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)は46.1kmを走り切った。不測の事態を不動心で乗り越え、2年連続で世界の頂点へと登り詰めた。UCIロードレース世界選手権チューリッヒ大会、男子エリート個人タイムトライアル表彰台の両脇には、イタリア代表の2人、フィリッポ・ガンナとエドアルド・アッフィニが立った。 【ハイライト】UCI世界選手権大会 男子エリート個人タイムトライアル|Cycle*2024 「人生で最も難しいタイムトライアルだったかもしれない。でも結局、勝ちたいなら、自分の身体を感じる必要があるんだ。あんなことが起こったが、最終的には僕が勝った。それが一番大切なこと」(エヴェネプール)
ゼッケン「1」番を背負うディフェンディングチャンピオンが、出走台の上で、黄金色に輝くバイクにまたがった直後だった。まさかのチェーン脱落。現場はパニックの空気に包まれた。
メカニックたちの迅速な対応のおかげで、出走へのカウントダウンが始まる頃には、エヴェネプールは改めてスタートポジションについた。ところが、順調にコースへと滑り出した直後に、本人はもう一つの異変に気が付いた。
「パワーメーターが全く動いてなかった。純粋に感覚だけでタイムトライアルを走った。(中略)プッシュしなきゃならないと同時に、限界を超えてもならなかった。だって自分がしていることを、正確に把握することはできなかったから」(エヴェネプール)
幸いだったのは、エヴェネプールが、出走全59人の最終走者だったこと。コース途中に3つ設けられた中間計測地点を首位で通過し、フィニッシュラインで最速タイムを叩き出しさえすれば、自動的に優勝はついてくる。
平地基調のコース序盤を駆け抜けた後、第1計測地点では、かつて世界選2連覇を果たしたTTスペシャリストのガンナを6.70秒上回った。道程半ばに構える上り坂のてっぺんで、差は順調に9秒20秒へと開いた。テクニカルなカーブとアップダウンをこなし、チューリッヒ湖畔へとダウンヒルすると、リードはさらに広がり19秒。
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