「コロナウイルス」をはじめとする「人類共通の敵」との戦いに向けて
中国・武漢市を中心に感染者が増加の一途をたどっている新型コロナウイルスによる肺炎。中国本土の感染者は、すでに2002~2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)を上回っており、日本でも人から人への感染が疑われる事例が発生するなど、その感染力の強さが世界的な脅威となりつつあります。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、この問題について「人類共通の戦い」と指摘します。だからこそ、心を一つにして取り組まなければいけないといいます。若山氏が独自の「文化力学」的な視点から論じます。
コロナウイルスとの戦い
中国の武漢から始まった新型コロナウイルスによる肺炎が世界的脅威となっている。 春節と重なったことが危惧されたが、中国政府は大胆な封じ込め作戦を取り、軍の医療チームも投入され、新しい病院の建設にも着手しているが、簡単には収まりそうもない。 すでに相当の人数が武漢から出たようで、これはもはや中国の問題ではなく人類全体の問題となっている。他の国でも、ウイルスの培養、ワクチンの開発など緊急の対策に着手しているようだが、もちろん国家を超えた無条件の協力関係が必要だ。 これまでも、新しいウイルスが出現するのは大きな脅威であったが、人類はこれに何とか対応してきた。しかし新しいワクチンを開発すれば、またそれを超えるウイルスが登場する。つまりイタチゴッコである。いずれ人類はウイルスに滅ぼされるという説もあるが、われわれはこの限りなき悪戦苦闘をストップするわけにはいかないのだ。 そして近年のグローバリズムが、この問題に拍車をかけている。 中国だけではなく、これまでは比較的その地域にとどまっていた人々が、膨大な数の観光客となって、それぞれの風土のウイルスを世界中に拡散させているのだ。金融における過剰流動性が指摘されたように「ウイルスの過剰流動性」というものがあるのかもしれない。 これは人類が一致して当たるべき問題であり、今後、科学者と医療関係者を中心として、あらゆるデータを集積し、発見、制御、治療など、予測される事態への対策を練り、緊急対応のチームをつくっておくべきだろう。