現役医師作家 献体写真問題に「言語道断」 解剖実習回想し「こんな時だからこそお伝えしたい」
医療をテーマにしたミステリー小説「禁忌の子」で第34回鮎川哲也賞作家を受賞した作家で医師の山口未桜氏が25日、X(旧ツイッター)を更新。東京美容外科に勤務する女性美容外科医が献体写真をSNS投稿した問題に思いをつづった。 問題となっているのは、女性外科医の黒田あいみ氏がグアムでの解剖研修の写真とともに「いざ Fresh cadaver(新鮮なご遺体)解剖しに行きます!」「頭部がたくさんあるよ」などとした投稿。献体された死体の一部にはモザイクがかかっていなかった。ネット上の騒動を受け、黒田氏は当該投稿を23日までに削除し、自身のブログに謝罪文を掲載するなどしている。 山口氏はこの問題について「新人作家アカウントですが、勇気を出して、医師としての、あくまでも自分の思い出を綴ります」と言及し、自身の医学部時代の解剖実習を回想。「遺体を切り刻むという表現をされる方がいますが、実際は全く違っていて、丁寧に丁寧に、損傷しないよう気を配りピンセットを使って(メスを使う場面は実はあまりありません)神経の一本一本、血管の一本一本、筋肉のつき方などを一つずつ確認していきます。気が遠くなるような細かい作業を何ヶ月もかけて進めます」と説明した。 さらに実習の前後には黙とうし、全ての実習が終わったら合同慰霊祭が行われ、全員が喪服で参加して祈りを捧げるという。「少なくともわたしはお寺で「ありがとうございました」と心を込めて長い間祈りました。みんなそうしていました。笑ってる人なんていませんでした。この実習が、医師として非常に貴重な財産になりました」と振り返った。 また、病理解剖や司法解剖についても説明し「ご遺体に向き合う真摯(しんし)な姿勢は共通しています」と強調。その上で「今回起こった出来事には怒りを覚えますし、言語道断であってはならないことだと思います」とした。 今回の問題を受け、ネット上では「私も親に献体やめなって言おうかな」「少なくとも私は、絶対に献体はしないと本気で決めました」「家族は絶対にさせない」など、献体に対する不安や不信感を募らせた書き込みも散見されるが、山口氏は「今までご献体下さった方や、病理解剖にご協力して下さった方のご遺族に感謝と、少なくともわたしと、わたしの知る限りの周りは全員、ご遺体を丁重に扱い、医学のために勉強させて頂き、そして弔ってきたことをこんな時だからこそお伝えしたいと思い、これを書きました。ご不安が少しでも和らぎますようにと祈ってやみません」と思いをつづった。