『ヒプノシスマイク』観音坂独歩役・伊東健人が語る麻天狼の今「最終的にはいちばん怖い、底が知れない麻天狼が戻ってきた」 - ディビジョン別CDリリースインタビュー
フックで明確に仲間のことを彼なりに表現している
◆さて、この度、約4年ぶりにディビジョン別CDがリリースとなります。まず、ドラマトラックのシナリオについてお聞かせください。今回の独歩は得意先との食事を途中で抜け出して一二三の元へと駆けつけましたね。 なるべくそういう行動は取らないほうがいいんでしょうけど、今までの独歩だったら絶対にできなかった行動ですよね。立派になりました。今回のドラマトラックでは、なぜ独歩と一二三がこうなったのかというところまで、深く切り込んでいましたよね。 ◆仄仄が一二三の家族にしたこと、そんな仄仄を「理解したい」という一二三の姿が描かれていました。 以前に、「女性恐怖症じゃなかった一二三と、まだ社会にもまれていないときの独歩はどういう関係だったのか」ということを考えたことがありました。ひょっとしたら今の関係とは逆の位置だったかもしれなくて、今は一二三が独歩を引っ張っている感がありますが、女性恐怖症を仄仄に植え付けられた時に引っ張り上げたのは、独歩だったのかもしれません。何だかそういう過去も垣間見えるようなドラマトラックだったなと感じました。 ◆一方で、寂雷先生もまた違った表情を見せた気がします。 寂雷先生は博愛主義者なのか何なのか、個人的にまだよく分からないところがあって。今回のドラマトラックとソロ曲で一段と分からなくなりました。一体、どういう視点で平和を見ているんでしょう。時々、寂雷先生は自分がトップに立って先導することで世界平和を目指しているのかもと思う瞬間もあります。「自分がトップに立てば世界が平和になる」という考え方って、果ては独裁者になってしまう可能性もあって。先生は、そういう危うさを持っている気がします。 そういう意味では、今回のドラマトラックを通じて僕は一二三のほうが平和主義者・博愛主義者に感じました。もう愛だけを見つめて突っ走るというか。いくら何でもそんなことできるわけないじゃんということを真っすぐに「できるよ」と言って、やってしまうんです。 ◆究極のお人好しと言いますか。 今回のドラマトラックでも独歩が「いくらなんでもさ……」みたいな感じでツッコんでいましたよね。楽曲も今回は完全に「愛」でした。一二三も印象がまたひとつ変わりましたね。ここにきてこれだけ印象が変化した麻天狼は、今後どうなっていくんでしょうね。タイプの違う3人がどういうふうに歩んでいくのか気になります。 ◆独歩のソロ曲「Andante」は、そんなドラマトラックの物語を経ての楽曲になっている気がします。 そうですね。今回のドラマ後の最新の気持ちを表現していると思います。問題がいくつか解決して彼なりに成長した部分があってからの曲なので、追い込まれていないんですよね。それが今までの独歩のソロ曲と大きく違う点かと思います。朝日とか光を感じているというか、下ではなくて上を見ているというか。そういう気持ちを表している楽曲です。 ジャンル的には、ガチガチに韻を踏んでリズムを固めるというよりも、ポエトリーリーディングな曲ですね。アプローチの仕方が過去いちばん難しかったかもしれません。でも、作詞・作曲を担当してくださった小林私さんが『ヒプマイ』のこと、麻天狼のこと、観音坂独歩のことをちゃんと見てくれている人だったので、信頼を持ってレコーディングも進められました。 ◆実際のレコーディングはいかがでしたか? 音として苦しく聞こえないようにと意識していました。今回はラップになり過ぎてもダメだし、普通にしゃべり過ぎてもダメで、そこの機微みたいなものがすごく難しかったんです。その塩梅がバチっとハマったとき、言葉がボンと耳のなかに入ってきて、アガるんですよね。でも、それを狙ってやれたら苦労はしない訳で。正直、レコーディングのときと同じものを歌うのは難しいんじゃないかなと思っています。歌っている分には楽しい曲なんですけどね。 ◆改めて、楽曲の推しポイントを教えてください。 ポエトリーではない、フックの部分ですね。元々は「チグリジア」くらいのテンションで声も小さく歌っていたのですが、「もっと、もっと前に」という気持ちも入れていくことで、どんどん歌になっていきました。 あとはリリックも好きです。「指定口座に振り込む電気代 日々は綱渡り、歩く平均台」のところは今までの独歩も言ってきたことかもしれませんが、フックはこれまでには絶対になかった、明確に仲間のことを彼なりに表現しているんです。僕は「喜ぼうと鏡の前で笑うふりをした」のは独歩で、「愛情と呼ぶ催眠術に罹ってみた」のは寂雷先生、「対等でいたい」のは一二三なのかなって思いました。そして、「響く雑踏を独歩しなくたって構わない、少しは」というリリックに繋がる。ここでひとりではないんだと、一気に晴れやかになるのが好きですね。 ◆まさにこれまでの積み重ね、そして今回のドラマトラックの物語を経てという曲になっている。 そうですね。麻天狼の楽曲なら近いことは言っているのですが、ソロ曲でこれが言えたということが、独歩にとって大きなことだと思っています。 一方で最初と最後の4行で「束にして貴方に」と言っているところは、僕自身は特定の誰かに向けてはいません。強いて言えば、目の前に現れた誰かですかね。例えばレストランに入ったときに料理を運んでくれたウェイターさんとか。それくらいの感覚で歌っていました。ただ、曲の最初と最後は言葉としては同じですが、音の盛り上がり方は違うんです。そういうところも含めて、この曲のぜんぶが好きですね! ◆熱く語っていただきありがとうございました。本曲のライブでのパフォーマンスも楽しみです。楽曲のリリースやライブ、ゲームなどさまざまな展開をしてきた『ヒプマイ』。今後、伊東さんが『ヒプマイ』でやってみたいことはありますか? 今回のドラマトラックもそうですが、最近の『ヒプマイ』は、キャラクターたち各々が抱えている問題が少しずつ解決されてきている気がします。だからこそ、やってみたいこととは少し違うかもですが、ヒプマイのストーリーをこれからも見届けていきたいですね。もちろんエンディングを迎えるのは寂しいことですが、「結末はどうなったんだっけ」で終わってしまう作品もあるかもしれないなかで、ストーリーを結末まで見届けていけるというのは幸せなことでもあると思うんです。なので、『ヒプマイ』に関してはちゃんと最後まで一緒にたどっていきたいなという気持ちが、僕はありますね。あとは、もっと俗っぽい話をするならワールドツアーとかかな。 ◆速水さんはドバイに行きたいとおっしゃっていました。 奨さん、もう行ったことあるでしょ(笑)。木島さんは何と言っていましたか? ◆海外でのライブほか、ディビジョン別のライブもやりたいと。 それぞれのディビジョンの現地でやれたら激アツですね。許されるのであれば、歌舞伎町をジャックして、各モニターでライブ配信なんかやったら、盛り上がりそうです。 ◆確かに盛り上がりそうです! 本日は熱のこもったお話をありがとうございました。最後に、伊東さんが思う麻天狼の魅力を語っていただければと思います。 そうだなぁ。今までだとスルスル出てきたのですが、ここにきて若干迷ってきてしまいました。でも、今回のドラマを経てということであれば、「戻ってきた」ということでいいのかなと。最終的にはいちばん怖い、底が知れない麻天狼が。以前は「全員消滅」なんて攻撃力の高いリリックをかましていましたが、その片鱗が見えた気がします。最終的に強くて、怖くて、敵に回しちゃいけないのが麻天狼。「やっぱり、あいつらがいちばんつえー! カッコいい」と思ってもらえたら、僕はうれしいかもしれないです。 <PROFILE> 伊東健人 ●いとう・けんと…10月18日生まれ。東京都出身。B型。主な出演作は『魔法使いの約束』ファウスト役、『【推しの子】』ゴロー役、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』青柳冬弥役など。 ●photo/YOSHIHITO_SASAKI text/M.TOKU
M.TOKU
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