堀田真由、涼の“危うさ”をどう乗りこなす? 『若草物語』の芝居で見せる新たな一面
社会派シスターフッドコメディーと銘打たれた『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(日本テレビ系)。第1話の見どころは、間違いなく堀田真由が演じる町田涼の啖呵だろう。涼の主張や行動が正しいかどうかは別として、あの涼の言葉を聞いていると、恋や結婚を前提とした生き方は本当に自分が選んだものなのだろうかと思ってしまった。恋や結婚に限らず、自分の人生を自分で選んでいるかということが、この物語の大きなテーマになりそうだ。 【写真】場面カット(複数あり) 物語の根幹であり、涼のスタート地点となった黒崎潤(生瀬勝久)への啖呵。第1話はあのシーンまでに涼がどのように感情を積み上げていくかがキーだったように思う。堀田真由が表現するちょっとした表情やリアクションから感じる涼の人間性と、周りからの意見を飲み込みきれていない違和感が、涼が持つ怒りへの納得感とそれをぶちまける爽快感につながっていた。真っ直ぐに感情を発露させる堀田真由の姿に、「こんな演技もできるのか!」と言いたくなった。 というのも、これまで堀田が演じてきた役はどちらかといえば感情を隠す役が多かったように思う。『風間公親-教場0-』(フジテレビ系)では、風間(木村拓哉)に振り回される新人刑事たちを、明るく見守る伊上幸葉役をチャーミングに演じ、『CODE-願いの代償-』(読売テレビ・日本テレビ系)では、謎のアプリ「CODE」の正体を探るハッカー・三宅咲役を飄々と演じて見せた。どちらの役も普段は掴みどころのないキャラクターだが、仲間や家族が傷つけられることには強い怒りを表し、そのギャップが魅力となる芝居を見せつけた。 地上波連続ドラマ初主演となった『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では、ピアニストになる夢に破れ、自分の感情をひた隠して生きる河野美璃を丁寧に表現。堀田が見せた自分の人生を諦めたように生きていた美璃の姿、青木空(萩原利久)に恋をして、自分の人生と空に向き合い、不器用に前へ進んでいく姿は、切なく儚いストーリーに人間の生き様という美しさを添加してくれた。 日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)では、明墨法律事務所の新人・赤峰柊斗(北村匠海)の指導役・紫ノ宮飛鳥をクールに演じた。明墨の優秀な右腕なのだろうと感じさせるキャラクターとして登場したが、途中から父・倉田功(藤木直人)に起きたことに心を揺さぶられ、戸惑い、それでも信念を持って事件に立ち向かう強さを見せた。 堀田は演じる役柄によって、飄々と、切なく、クールにと、巧みに感情を隠す。キャラクターの表の印象を強く見せているからこそ、隠している感情や葛藤も鮮やかに見えるのだ。 この芝居の魅力は、自身も代表作となると確信して挑んだ『大奥』(NHK総合)の成果とも言えるだろう。『大奥』で堀田が演じた千恵(家光)は、女として生きることを奪われたことで横暴な振る舞いと憂さ晴らしをしなければ、自身の人生を受容できない悲しさに包まれた女性だった。そんな彼女が、有功(福士蒼汰)と心を通わせ、恋をし、母として強くなっていく。堀田が、役柄の感情の激しさも機微も自分の中に取り込んで、千恵(家光)の葛藤を表現できたからこそ、『大奥』「3代・徳川家光×万里小路有功編」は多くの人の心を掴んだ。 堀田が演じてきたこれまでの役柄に比べれば『若草物語』で演じる涼は、裏表がなく正直に自分の言いたいことを言っているように感じられる。恋や結婚をすべきという価値観、それを押し付けてこようとする社会に、涼が怒っているのは間違いない。一方で、恋や結婚を選択する生き方を拒否しすぎることは、恋や結婚を望む女性の存在を否定することに繋がりかねない。その危うさに涼自身が気付くことができれば、涼は間違いなく成長できるだろう。そんな涼の変化を鮮やかに表現する堀田が見たいと望んでしまう。また、涼がなぜそこまで恋や結婚を否定するのかはまだ明らかになっていない。彼女の主張の裏にある過去の経験、葛藤が描かれれば、涼のヒロイン像に説得力が増すだろう。 これまでさまざまな形で二面性を見せてきた堀田真由の芝居の面白さを、思い切り味わえる作品になることを願いたい。
古澤椋子